なぜマリファナ(大麻)は「悪」だといわれてきたのか?

マリファナが「悪」として扱われるようになったのは、ほんの100年ほど前からのこと。それ以前のマリファナは、私たちの生活の片隅で静かに存在していました。時には嗜まれ、時には薬となり、時には興奮剤として使われてきましたが、それは決して「悪」ではなかったのです。

なぜ、マリファナは「悪」になったのか、そして今、なぜ世界でマリファナの合法化が広がっているのか、その理由は、人とマリファナの付き合いに目を向けるとみえてきます。

人とマリファナとが共存していた時代

紀元前7000年頃には、マリファナが儀式の中で向精神薬的な役割をしていたことが分かっています。

神聖な儀式の中で特別な人だけが使う特別なものであったり、特別な場面で使われる精神安定剤としての役割を果たしていたりと、日常的な使用は少ないものの、身近なところで必要に応じた使われ方がされてきました。その頃、人とマリファナとはちょうどいい距離感で共存していたといえるのではないでしょうか。

アメリカと大麻の共存時代

現在超大国であるアメリカを例にしてみましょう。

アメリカ先住民たちは、大麻草(ヘンプ)を生活に取り入れていました。儀式用として、娯楽用として、薬用としてなど、用途はさまざまでしたが、それを「悪」とみなすことはありませんでした。

ヨーロッパからの入植者たちは最初、このヘンプを主に繊維材料として栽培することで生活に取り込みました。政府などがバックアップするレベルで、本格的に作物としての栽培が続いていきます。当然ながら、この頃のアメリカ人たちはヘンプを麻薬だとは考えていませんでした。それというのも、このヘンプには「THC」という大麻に含まれる興奮物質がほとんど含まれず、娯楽用になりえなかったのです。この頃のアメリカのヘンプはあくまで作物でした。

一方で、ヘンプとは異なる医療用の大麻もまたアメリカで使用されるようになります。これは多くがインドから輸入されたものであり、医療現場では当たり前のように使われ、これを娯楽品として使用する人もいなければ、「悪」と考える人もいませんでした。

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アメリカが大麻を拒否し始めた理由

医療用大麻が広く使用されていたアメリカで初めての麻薬取締法が制定されることになりました。でもこの時は、医師たちによる「大麻は医療現場で使われていて、娯楽としては使われていない」という発言が通り、大麻は対象外となっています。

ところがその後、急速に大麻の立場が変化していきます。

さまざまな治療薬が発明される中、大麻の医療品としての人気が下がっていきます。また、南米から強烈な興奮作用を持つマリファナ吸引という文化が流入してきました。同時期にアメリカの治安悪化という、誰もが身近に体感しやすい社会状況の変化が起こったこともあり、社会における大麻への感情、そして受容度が大きく変化していくこととなります。

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なぜマリファナは「悪」になってしまったのか?

今、世界的にはマリファナの合法化が進んでいます。ただ、歴史的にみれば現代に入ってからほとんどの国で非合法であったこと、今でも多くの国が非合法の姿勢を崩していないことから、マリファナに対する根強い「悪」感情の存在は明らかです。

この「悪」感情はどこからやってきたのでしょうか?

先に延べたように、人とマリファナは長く共存してきました。20世紀初期には世界各地で穏やかに使用され、ごく一部で嗜まれているにすぎませんでした。その存在は、たばこや酒とは違って目立つことがないほどおとなしいものだったようです。

ところが、南北アメリカの国境エリアで膨れていった治安悪化をきっかけとする「移住者差別」の中で、このマリファナが政治的に利用された形跡があります。「昨今の治安の悪化は、南からの移住者たちがもちこんだマリファナによって引き起こされている」という認識を拡げるような大げさなニュースをばらまくことによって、「マリファナは凶悪犯罪者を作り出す」というイメージをも植え付けたのです。

こうして、それまでほとんどノーマークだったマリファナが突然悪役として脚光を浴びることとなり、アメリカをはじめとした先進国は競って「マリファナを含むドラッグの強力な法的締め付け」へと方向転換していきました。これが現在の「マリファナ=悪」の図式の基礎となっていると考えられています。

今、マリファナの合法化が叫ばれるのはなぜか?

すっかり悪者になったマリファナ。それが今になって合法化への動きが顕著化しているのはなぜなのでしょうか? その理由は大きく2つに分けて考えられます。

1つ目は「マリファナのほうが安全だから」という比較論。2つ目は「マリファナ治療を合法的に受けたいから」という医療的視野。

1つ目については、それだけ「アルコールによる社会問題」と「より強力な麻薬による問題」が深刻であるという事情があります。詳細な研究結果も発表されていますが、「飲酒と強力な麻薬摂取は人を死に追いやり、健康を害する」が、マリファナは「そのどちらもない」という事実がすべてを語っています。

人が「酔い」を求める時、アルコールよりもマリファナの方が安全だという科学データが揃っているのです。それなのに、なぜ酒は合法でマリファナは非合法なのでしょうか? 世の中のマリファナ合法化は、そんな矛盾を正そうという活動でもあるのです。

また、医療現場ではより深刻です。太古からマリファナの治療分野での使用は知られていますが、科学研究の進歩した現代では、より多くの医療分野で大麻治療薬の有効性が証明されています。

たとえば、マリファナが持つ「食欲増加作用」は、食欲減退をともなう癌やHIV患者にとって、「命」をつなぎとめる栄養摂取につながります。また、神経痛の一つであるニューロパシーなどの強烈な痛みや炎症に対して劇的な痛み止め効果があることでも知られています。一部の患者にとって、マリファナは必要不可欠な「生」へのチケットであり、QOLを高める重要な鍵なのです。

ところが、大麻の使用が非合法であるがために、十分な治療を受けられず、合法国へと転院・移住する患者もいます。彼らが自国での合法化を求める気持ちは真剣そのものです。

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今後、人とマリファナの関係はどうなっていくのか?

人とマリファナが適度な距離で共存してきた過去。人がマリファナを誤解し拒否したこの100年。マリファナとの関係を見直しはじめた現在。

マリファナそのものの安全性がなかなか世の中に広まっていかない理由には、たった100年ほどの間に私たちの中に「マリファナ=ドラッグ=悪」という図式がしっかりと根付いてしまったからでしょう。また、より強力な麻薬によって壊れていく人の存在が、私たちの中にある麻薬に対する恐怖心を煽り続け、マリファナの安全性を信じきれない気持ちもありそうです。マリファナを許してしまえば、なし崩し的にほかのドラッグも蔓延していくのではないかという不安さえそこにはあります。

人がマリファナを認めるには、マリファナに関する正しい知識を広めることが必須です。同時に、アルコールの有害性、マリファナ以外のドラッグの危険性も知ることで、各自が「酔い」を求める時の正しい選択のための材料となっていくでしょう。

ただ、悪化してこじれてしまったマリファナと人の関係を修正するには、マリファナが悪となった100年以上の時間がかかる可能性もあります。

まとめとして

マリファナはなぜ今も悪なのか?
~私たちはマリファナが悪である理由を知ろうと思ったことがありません。

なぜ合法化がこれほど難しく進まないのか?
~合法化の必要性が理解できていません。

マリファナ以上に「悪」になりえる酒は、なぜほとんどの国が合法扱いしているのか?
~酒は常に合法であり、そこに疑問を挟む必要性を感じません。

私たちの多くは、与えられた知識や情報にたやすく流されていきます。「マリファナは悪だ」と周囲から教えられて育ったため、それに疑いを持つことがなく、合法化を叫ぶ声には必ず反対意見が添えられていて、首を傾げるばかり、テレビで電車の吊り広告で「買え」「飲め」と勧められる酒の合法性になんの疑問を挟む必要があるでしょうか?

人とは非常に情報に踊らされやすい生き物です。だからこそ、「マリファナは悪なのか」、それ以前に「マリファナとは何なのか」を知るためには、自分自身の目と耳で集めたデータや情報を十分に精査して判断していく必要があるのではないでしょうか。

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