インド・デリーの地下鉄建設ストーリー。日本人技師とインド人が結束した瞬間

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インド・デリーの地下鉄建設は「ノーキ」が合言葉

混沌を絵に描いたような国、それがインド。インドは、混沌だからこそインド。

そんなインドに、旅人たちは何か特別なものを与えてくれそうな気配を感じ取ってひきつけられていくのでしょう。

そんなデリーは今、地下鉄網が着々と延びています。これにより、インドの町を埋め尽くす混沌が多少は薄らいでいくはずです。

でも、この日本からの援助で建設された地下鉄がインドにもたらしたのは、乗り物としての地下鉄だけではなかったのです。

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インドの輸送システムには地下鉄こそが必要だった

インド各地には複数の地下鉄が走っています。そして現在のデリーでも、暮らすにも旅をするにも、地下鉄の存在はなくてはならないものになっています。

では、地下鉄がなかった頃はどうだったのでしょうか? 道には車とバイクと自転車とリキシャと牛と人とがごちゃまぜで存在し、それらが右往左往しながら、お互いに少しでも前に出ようと先頭争いをしているような状態でした。

慣れない旅人にとっては、道を渡るのも一苦労。また、いざタクシーやリキシャを捕まえてやれやれと思ったところで、目的地が見えているような距離であっても、遅々として進まずいつまでも辿りつかない…そんな大渋滞が常にこの街を覆い尽くしていました。

限られた土地の中、乗り物の数も人の数も既に飽和状態を越えていて、あとは空中か地下しかスペースはなかったのです。

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日本からの資金と技術援助

そこで出番となったのが日本。地下鉄工事もトンネル工事もお手の物です。

円借款という資金援助とともに、多くの技術者が日本の技術と建設精神を携えてインドの現場に集まりました。

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スタートもネックも「時間」の感覚の違いから

日本の技術者とインドの技術者の現場顔合わせの日。時間よりも早くに作業服をきっちりと着込んで整列していたのはもちろん日本人。インド人の技術者はそのトップをはじめ数人は時間前に現れたものの、全員が揃うにはさらに10分以上かかったそう。

「集合時間とは、作業を始める時間である」とは、全員が揃うのを無言で待ち続けた日本人の代表者が放った言葉です。

翌日は15分前に現場に現れたインド側のトップでしたが、それでもすでに全員集合している日本人を目の当たりにし、「定められた時間を守る」ことを正しく学んだそうです。

国民性と言ってしまえばそれまで。日本人は5分前行動が当たり前。それも5分前には次の行動に移るための準備が完了している前提です。でもインドは違います。

少なくとも、その時点で集合がかけられていたインド人技術者たちは一流の大学を卒業し、海外で学んだ経験もあるような人物たちです。それでも、集合時間は「その頃そこにいればいい時間」としてしか認識されていなかったのです。

日本人技術者がまず口を酸っぱくして言い続けることになったのが「時間を守ること」、そしてそれは「納期」の重要性にもつながっていたのです。

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紅一点! 女性技師がインド人作業員たちのトップに

実際の工事現場で働くインド人作業員の数と日本人スタッフの数には大きな差があります。トップクラス同士がいくら口を酸っぱくして「納期の重要性」を説き、理解し合えたとしても、それを末端の作業員たちに伝え理解させるのは非常に困難でした。

そこに登場したのが一人の日本人女性です。

男性が絶対的に優位なインドの建築社会の中、一人の日本人女性が土木技師として約250人のインド人男性作業員を従わせることになったのです。

反感・甘え・差別など、さまざまな問題はあっても、作るのは地下鉄であり、そのために正しい発言をしている自信があって初めて彼女の言葉は生きたのでしょう。

安全のための装備の徹底・現場の整理整頓・集合時間の厳守・そして納期は守らなければならないことを、繰り返して徹底していったそうです。

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見本を示して

いくら口を酸っぱくしても、荒げても、実のない言葉は通じません。女性技師は、連日誰よりも早く現場入りし、細かいチェックを欠かしませんでした。また、進んで憎まれ役も買ったといいます。

誰よりも小柄な彼女は、時に厳しく時に明るく、それでも徹底してインド人作業員たちを監督し導き続けました。インド人技師たちの後押しもありましたが、彼女の真剣さと技術の確かさが作業員たちに認められるようになるまで、そう時間はかからなかったようです。

「私が来ると合図の笛がなる」という彼女は、作業員たちにとって小さな鬼軍曹的な存在になっていったのです。

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日本の建築現場の姿がインドでも

いつしか工事現場では、集合時間よりも早めに来て一服しながら、小さな軍曹の到着を持つ作業員の姿が当たり前になり、お揃いのヘルメット・安全帯を身につけ、その日の最後にはすべての工具があるべき場所に片づけられているという、本来あるべき姿が定着しました。

これ、日本では当たり前の建築現場の姿ですね。でも、インドでは違ったのです。

インドの道路脇で工事が行われているのは日常茶飯事ですが、ヘルメットをかぶっている作業員はまばら、服装も普段着のまま、三々五々集まってきたかと思えば夕方になればフラ~と姿が見えなくなる、そんな不思議な現場が当たり前だったのです。

ところが、日本人技師たちの奮闘とインド人作業員たちの協力によって、インドにおける建築現場の姿は徐々に変わってきているといいます。

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完成はなんと納期2か月半前

日本人技師たちが繰り返す「ノーキ(納期)」という言葉は、デリーの地下鉄工事に携わった人にとって呪文のように染みつきました。

ノーキがやってくるのは最終完成日だけではありません。毎月・毎週・毎日のノーキが存在しています。それらの一つでもおろそかにすれば全体のノーキは守ることができなくなってしまうかもしれません。

合言葉のように交わされるようになったノーキの言葉は、日本・インド両国の技師や作業員たちを一丸とし、初期工事の完成はなんと! 2か月半も納期を前倒しできたのです。

自信をつけたのは、日本人技師だけではありません。インド人たちの「俺たちやれる!」という確固たる思いは、確実に次の地下鉄工事に、また違った建設工事にもつながっていると、インド技師の代表は語っています。

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建設の後は運行指導

こうして地下鉄は完成しました。列車も入りました。では、それで終わりかというとここからがまた一苦労です。

インドのバスが時間通りに走ったことがあるでしょうか? ガイドが時間通りに迎えにくる確率はどれくらいでしょうか?

そう、運行時間の指導が次の課題だったのです。

地下鉄完成の翌日、日本人の運行担当者が現れ、インド人技師にあるものを手渡したそうです。それはストップウォッチ。

秒単位で正確な運行を行うことが大切だということを、そのプレゼントで伝え、毎日徹底的な「時間」の管理の大切さを叩き込んだのです。

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地下鉄がインドにもたらしたものは

安全・正確・便利な交通手段? キレイな空気? 整理整頓された建設現場? すべて正解ですがそれだけではありません。

たとえば「ノーキ」という言葉。その概念とそれをインド人が守ったという体験が残されました。

デリーの地下鉄が日本の協力の下、どのようにして建設されたかをまとめたビデオを見たインド人たちのコメントからは、自分たちの手で町に作られた地下鉄を誇りに思っていること、それに協力してくれた日本に対して大きな感謝を抱いていることが伝わってきます。

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まとめとして

優秀なる地下鉄の存在は確かにインド人たちの生活リズムの一部を整え、空気汚染の一部を削減し、混沌からくるイライラの一部も減らしてくれたでしょう。

地下を走る正確で律儀で便利な日本からの贈り物は、ともに協力し合って作業をしたインド人たちの心に、日本人には当たり前でありながら、インド人にとって新鮮な「何か」を伝えながら今日も秒刻みで走り続けています。

ささやかながらインドに違った風を吹かせている地下鉄ですが、インドらしさが失われるきっかけになってしまうのではとの心配は無用でしょう。

インドの混沌はこれくらいのことで消滅するわけがありません。

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