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ロシアの伝統的木造建築を集めた野外ミュージアム~キジ島の木造教会建築/ロシア連邦・カレリア共和国
数多いロシアの世界遺産の中でも、特殊な魅力を持つ歴史的木造建築物を集めたミュージアム島、それがキジ島だ。
ロシアといえば玉ねぎドームが目印。キジ島の教会にももちろんたくさんの玉ねぎドームがついているが、それさえも木造。
ロシアらしいはずなのに、ロシアらしくない。でも、これこそが伝統的ロシアの木造建築なのだ。
カレリア共和国
ロシアの北西、フィンランドと国境を接するカレリア共和国は、27,000もの河川、ヨーロッパ第一位と第二位の面積を持つ「ラドガ湖」と「オネガ湖」を抱く水の国だ。
また、ダイアモンド・金・銀・チタン・鉄鉱石などの鉱山資源が豊富なことから石の国でもある。
オネガ湖
ロシアの古都サンクトペテルブルグの北東435kmにある淡水湖で、ヨーロッパで2番目の大きさを誇る。湖の西岸にはカレリア共和国首都「ペトロザヴォーツク」があり、もう一つの巨大湖「ラドガ湖」とは川でつながっている。
オネガ湖は氷河湖に形成されたとされ、水深が最大で120m、面積は約10,000キロ平方メートル。氷河によって削られた北岸は複雑な湖岸を形成し、湖水上に5,000あまりの島嶼を持つ。
湖畔には、ロシア人やカレリア人、そして混血住民が、古くは馬ソリ、現在はヘリコプターを使った生活をしている。それというのも、冬は厳しい寒さとなり、湖の表面は1mにも及ぶ氷が張り巡るため、船が運行できなくなるのだ。
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キジ島
オネガ湖に浮かぶ、長さこそ7キロあるが、その幅は500m程度という細長い島で、古くから周辺島嶼の中でも中心的な集落として存在してきた。
現在は、カレリアだけでなくロシアを代表する観光地として、世界中から旅人と建築家を集めている。
それというのも、この島に残された木造教会群とロシア中から移築されてきた素晴らしい木造建築たちで、島がそのまま博物館になっているからだ。
聖地としての歴史
そもそも、キジ島は先住民カレリア人にとって自然を崇める祭祀のための場であった。
その後住民たちは正教へと改宗していくが、キジ島を聖地とする考えはそのまま残り、いくつもの聖堂が建築された。
現在キジ島に立つ教会群は18世紀以降に建設されたものだが、実は16世紀の段階で既に「プレオプラジェンスカヤ教会」と「ポクローフスカヤ教会」は存在していたと考えられている。
しかし、この時の建物は、落雷・老朽化などによって崩壊してしまって残っていない。
「プレオプラジェンスカヤ教会」再興
現存する「プレオプラジェンスカヤ教会」は、1714年に再興されたものだ。
大きなドームをいくつも頭にのせた高さ37mの教会は、柔らかな地盤の上に建てられたために、建築当時から既に傾いていたといわれている。
しかし、戦争や社会主義体制の影響から完全に修復されることはなく放置されているうちに、木造建築の技術者が激減。このままでは保存することさえ危うい状態になっていた。
それが、現代になって「キジ大工センター」が設立され、修復作業と技術者育成とが同時に行われるようになったのだ。
プレオプラジェンスカヤ教会(顕栄聖堂)
ロシア正教教会らしい玉ねぎドームを持つバロック調の建物は、遠景では、まるで鉄か青銅で造られたかのように渋い輝きを放っているが、もちろん全てが「木」で造られている。それも、釘1本使うことなくだ。
近づけば、それが全て「木」を組み合わせて造られた芸術品なのがはっきりと分かる。あの丸い玉ねぎ部分ももちろん「木」であり、大量のイコンが展示されている内部も、もちろん全て木造だ。
プレオプラジェンスカヤ教会はその形こそ、ロシア各地で見る教会建築の特徴を持っているが、その質感はほとんどログハウス。しかしとんでもなく上等で凝ったやつだ。
3万枚のポプラ材を組み合わせ、雨や雪の影響を最小限に留めるデザインが施されたプレオプラジェンスカヤ教会には、まるでログハウスと同じような、不思議な暖かみ感じさせる何かがあるのだ。
ポクローフスカヤ教会(生神女庇護聖堂)と鐘楼
プレオプラジェンスカヤ教会は、夏専用に建てられた教会であり、寒くなってくると祈りを捧げるどころではなくなってしまう。
そこで続いて冬用の教会が建築された。それが、「ポクローフスカヤ教会」だ。一回り小ぶりなペチカ(ロシア暖房)付きの教会は、やはり玉ねぎ―ドームを頭に戴いた木造建築。
ポクローフスカヤ教会の建造にあたっては、なによりも、プレオプラジェンスカヤ教会とのバランスが大切にされたという。それは続いて建造された鐘楼にも言えることだ。
四角や三角の積み木を重ねたようなシンプルで可愛い鐘楼は、プレオプラジェンスカヤ教会とポクローフスカヤ教会と3つで微妙なバランスを保つ空間構成を考慮して建てられていて、周囲を回りながら眺めると分かるように、どの角度から見ても、サマになっている。
アシェーヴネフの家
キジ島全体が「キジ島保全区歴史建築民族国立野外博物館」となり、ロシア各地から歴史的価値のある木造建造物が移築されてきた。
キジ島には、草地の中に大小の木造建造物がぽつぽつと点在している。その中の一つ「アシェーヴネフの家」は、当時の農家の生活の様子を紹介する民芸博物館になっていて、中では当時の装いの女性が糸をつむいだり、民芸品を作ったりしている。
祈りを中心とした質素ながら落ち着いた生活の様子が伝わってくる。
そのほかにも、「アルハンゲル・ミハイル教会」・「ラーザリャ復活教会」・「サウナ」などの木造建築があり、どれも修復された内部を見学でき、しっとりとした木の匂いに包まれている。
なぜ木造にこだわる?
10世紀までのロシアでは木造建築当たり前だったという。それは、木材資源が豊富だったこともあるが、当時はそれだけの技術を持つ大工が大勢いたことの証明でもある。
しかし、時代が変わり建築スタイルは変わってしまった。それを再興するきっかけを作ったのはピョートル大帝だった。
新首都としてサンクトペテルブルグを造営することになったピョートル大帝の時代、伝統や社会へと関心を向ける風潮が高まり、キジ島ではそれが木造建造物の再興として働いたというのだ。
キジ島への行き方
カレリア共和国の首都であるペトロザヴォーツクから、バスとフェリーを乗り継いで1時間半の距離。
冬は湖面が凍結するため、ホーバークラフトでの移動となる。湖面も地面も見分けがつかないような白銀の世界を、雪煙を吹き上げながら走っていく。
キジ島自体が野外博物館なので、入島する際に料金を支払うことになる。船は原則往復チケットを購入し、首から番号札を下げる。帰りのチケット替わりでもあり、置いてけぼりを食った客がいないかどうかのチェックにも使われるらしい。
島内は自由に見学して回れる。
最後に
ロシアの片田舎の湖岸地方。真冬は凍てつく寒さだが、夏には避暑地として訪れるロシア人や裕福な北ヨーロッパ人もいるらしい。
世界遺産でありながら、一般的なロシアの観光ツアーに盛り込まれることは滅多にない穴場的存在だが、飛行機や電車、バスやホーバークラフトまで乗り換えてでも、訪れるだけの価値がある。
それというのも、もうロシアの街ではほとんど見かけることのなくなった伝統的ロシア木造建築の数々が待っているからだ。
都市部の絢爛豪華な玉ねぎドームを見た後に、木造玉ねぎドームに出会うと、現実世界というよりは、RPGの世界に足を踏み入れてしまったような感覚に陥りそうだ。
そこを訪れた人しか感じることのできない感動を、写真、動画、そして言葉で表現してみませんか? あなたの旅の話を聞かせてください。
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