タイで生き残る日本のブルートレインに乗ってみた!

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寝台特急。

日本では、北海道行きの寝台特急や急行が近年相次いで廃止され、鉄道ファンが最後の勇姿を一目見ようと駅や沿線に詰めかけたニュースが記憶に新しい。

かたや中国では遠距離輸送の切り札として夜行列車がさらに増発され、夜行新幹線なるものまで登場しているというから興味深い。中国の鉄道に関しては、私の書かせていただいた他の記事も併せてお読みいただければ幸いである。

そして今回紹介するタイでは、日本で現役を引退した寝台客車(ブルートレイン)が今も活躍してる。というとこで、今回は南国・タイへ目を向けてみよう。

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(写真:日本で活躍していた頃のブルートレイン客車)

実はタイと日本の鉄道での関係は、蒸気機関車の時代にまで遡る。日本とタイの線路の幅が近似であったこともあり、タイには戦後、戦時賠償を含めた日本製の蒸気機関車が多く輸出され、その後も日本から客車が輸出されるなどした。さらに2000年代になると、ブルートレインなど日本で役目を終えた中古の客車が譲渡されるようになった。

ブルートレインの車両が使われているのは、タイの首都バンコクと北部の都市チェンマイを結ぶ13・14列車。それぞれの時刻表は以下の通り。

13列車:バンコク(フアラムポーン)駅19:35 – – 8:40チェンマイ駅

14列車:チェンマイ駅17:00 – – 6:15バンコク(フアラムポーン)駅

今回私が切符を抑えたのは、13列車の二等寝台。日本で言うところのB寝台だ。ひさびさのブルートレインに胸を高鳴らせ、夜のバンコク・フアラムポーン駅へ急いだ。

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バンコク・フアラムポーン駅3番線には、すでに紫色に化粧直しされたブルートレイン客車が停車していた(この先ブルートレインという呼称は色からして不適切ではあるが、便宜上使用する)。アーチを描く屋根が美しく、異国情緒を掻き立ててくれる。

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最後尾が一等寝台車で、そこから前には二等寝台車が連なり、食堂車も連結されている。

ところがここで、一つ問題が発生した。日本の旅行代理店を通して「JRクラスの車両」と念を押したはずなのだが、当日の運用の都合で、私の席はブルートレインではない車両になってしまったのである(※寝台客車にはブルートレインではないものも混用されている)。はるばる日本から来てブルートレイン客車に乗らずに帰るのは余りにも惜しいと、ブルートレインの切符を持っている他の乗客に席を交換していただいた。

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改めて、ブルートレインの客車に乗車。色は変わっているが、折りたたみのドアなど非常に懐かしい。幼い頃九州に行くときに乗った寝台特急を思い出す。

線路とほぼ同じ高さのプラットホームからデッキに上がり、デッキとの境目の扉を開けて車内へ。

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窓を挟んで上下二段の寝台に、引き出し式の梯子。日本で活躍していた頃と変わりない二段式B寝台車の姿がそこにあった。思わず歓声を上げてしまうほどの懐かしさだ。この日の二等寝台車は、上段もそこそこ埋まる盛況さであった。下段を確保したいのなら、早めに予約したほうがいいかもしれない。

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こちらはA個室寝台、日本では「シングルデラックス」などと呼ばれていたタイプの部屋だ。タイ国鉄では一等寝台車として使用されている。

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室内にはタイ語の案内表記が各所に追加されているが、所々に日本語の表記が残っているのも面白い。「乗務員室」の丸っこい文字がやたらと懐かしい。

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センヌキ! 日本ですらほとんど見られなくなった表示をタイで見られるとは思っていなかった。ちなみにタイでは瓶飲料もまだまだかなり売られているので、使う機会があるかもしれない。日本人以外の乗客がこの栓抜きの存在に気付くかは別として…。

19時35分、列車は定刻にバンコク・フアラムポーン駅を発車。大通りの踏切を横切り、線路脇のスラムを眺めながらゆっくりと北上する。日本ならハイケンスのセレナーデに続いて車掌の放送が入るところだが、残念ながらタイではそんなものはない。代わりに、車掌が切符のチェックと寝台のセットをしてくれる。

程なくして、食堂車のスタッフが夕食のメニューを持って回ってくる。注文をすれば席まで届けてくれるそうだが、今回はせっかくなので食堂車で頂くことにした。寝台車の狭い通路を通り抜け、編成中ほどの食堂車へ。

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日本の中古である寝台車は冷房付きだったが、食堂車はなんと非冷房。扇風機が唸り、窓からは生温いタイの空気が流れ込んでくる。おまけにかなり揺れるので、器用に食事をすることが求められる。一気に感覚がタイのそれに引き戻されたようだった。

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そんな揺れる列車上での調理はおそらく相当の熟練を要するのだろう、しかし手際よく次々と調理を進めていく。

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こちらが本日の夕食、鶏肉料理にグリーンカレーやスープが付いて170Bである。タイではかなり割高な気もするが、日本円換算では700円ほど。コーラはサービスかと思ったら40B≒130円ほど取られた。ちなみに乗車前に買えば半額以下だ。ハート型のご飯が嬉しいが、残念ながら私向けの特別サービスというわけではなさそうだ。

なかなか美味しい食事に舌鼓を打ちながら窓の外を眺める。しばらく列車は渋滞の幹線道路と並走し、やがて郊外へ抜ける。線路はひたすらにまっすぐだ。人によってはここでビールの一杯でも…と行きたくなるかもしれないが、残念ながらタイ国鉄では列車内での飲酒が禁止されている。コーラで気分を紛らわせよう。

自分の寝台に戻り、真っ暗な窓の外を眺めつつ横になる。線路の継ぎ目を拾う単調な音が眠気を誘う。おやすみなさい…。

翌朝、寝ぼけ眼を擦って外を見ると、列車は山間の名もなき駅に止まっていた。峠越えのためだろうか、先頭に機関車を増結している。S字の線路を、身をくねらせながら列車は駆け抜けてゆく。洗面台で顔を洗って帰ると、他の乗客も何人か寝台のカーテンを開けて外を眺めていた。

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やがて空が明るくなり、朝陽が顔を出した。まさか、自分の人生で再び、ブルートレイン客車から朝陽を眺めることができるとは思わなかった。感無量である。

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朝食の案内が来る。チェンマイには9時前に着くので、私は今回はそこまで食事は我慢することにした。隣の客が食べていたのを指を咥えて眺めつつ…。

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8時40分過ぎ、ほぼ定刻でチェンマイ駅に到着。遅れが慢性化してることで有名なタイ国鉄だが、この日は幸いにも定時運行であった。冷房の効いた車内からホームに降りると、3月のタイのむっとする暑さに包まれた。今日もまた、アツいタイでの1日が始まる。駅前でソンテウ(乗り合いタクシー)を捕まえ、チェンマイの寺院巡りへ。乗って楽しく、チェンマイ観光にも便利な寝台列車、ブルートレイン客車が元気なうちに、あなたも乗りに行ってみては?

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