ジンベイザメと泳ぐ広大な珊瑚礁~ニンガルー海洋公園(Ningaloo Coast)/オーストラリア・エクスマウス
オーストラリアの魅力は「広さ」にある。道も家も空も海も人々の心も広々としている。
ニンガルー海洋公園はオーストラリア人にとってもちょっとした秘境的エリア。ネームバリューではグレートバリアリーフに負けているし、アクセスも今一つ。観光地としてまだまだ未開発な部分もある。だからこそ、手つかずの自然を満喫できる広さが残されているとして、こだわりを持つ人が訪れる場所になっている。
海も山もあるが、ニンガルー海洋公園でもっとも注目されているのは、海の生物との距離の近さだ。広大な珊瑚礁は多くの海の生物を育む。その中には、巨大なジンベイザメも含まれている。
世界でもジンベイザメと泳げる場所は多くないはずだ。
ニンガルー・コーストのニンガルー・リーフ
オーストラリアの西海岸、北のエクスマウスから南のコーラルベイまでの全長260km、そのすべてのエリアが珊瑚礁だ。それも、ビーチからほんの数mの場所から2km先まで広がるコーラルリーフヘブン。
ニンガルー・コーストはすなわち、ニンガルー・リーフでもあるのだ。
グレートバリアリーフと比較して知名度こそ高くないが、負けず劣らずの美しさと手つかず感がたまらない。
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珊瑚の産卵
珊瑚礁は年に一度、神秘的な夜を迎える。満月近くの夜、珊瑚たちがその子孫を残すために一斉に産卵を始めるのだ。
珊瑚が海へと産み流す卵は小さいが無数。白や薄いピンクなどの小さな丸い粒がふわふわと海面に向けて漂うように舞い上がる。その様子を雪に例えることもあれば、スギ花粉に例えることもある。
真夜中に満月で照らされた海はピンクに染まり、かすかに甘い匂いを漂わせる。ガラスボートなどの船の中から浮かび上がってくる珊瑚の卵を観察したり、ナイトダイビングをしてピンクの海の中を潜ったりするツアーが出ているが、その日程は毎年異なり、その日にならなければ確定はできない。
旅行会社や気象関連会社が予測を発表してはいるものの、確実ではないので、絶対に見たいのであれば、前後1週間程度の余裕を持って待機しておく必要がある。
親海ガメと泳ぎ、産卵を見守り、孵化する子ガメに感動
ニンガルー・コースト沿いのビーチは海ガメの産卵地でもある。大洋を泳いで渡ってきた親海ガメたちは泳ぐのは得意でも陸ガメのように歩くのは苦手。
砂浜を産卵のために歩いて上がり、穴を掘って産卵し、再び海へと戻って行く様子を、ビーチの脇で息をひそめる観察者たちが固唾を飲んで見守るのだ。
疲れ切った親海ガメは、海に辿りつくと、その波に身を任せるようにして再び沖へと泳いでいく。そんな親海ガメたちと一緒に泳ぐこともできるほか、時期がくると孵化した小さな小海ガメたちが、親海ガメが辿った通りの道を通って海へと向かうその戦いぶりと、波にもまれるようにして流されていく様子を海中から見ることもできる。
イルカの群れに囲まれる
イルカたちもまたニンガルー・コーストの重要な住民だ。
浅い珊瑚礁エリアを越えて、数キロ沖へ出ると、イルカたちの群れが迎えてくれる。
飼い慣らされているわけではないため、一緒に泳ぐほど近づくことはなかなかできないが、ボートで沖へと向かうと好奇心からか近づいてきて並走ならぬ並泳してくれる。
ジンベイザメと泳ぐ!?
現代の海に生息する魚の仲間の中でもっとも大きいといわれるのがジンベイザメ。巨大なサメだが主食はプランクトンで大人しい性質を持っている。
ぱっと見は強面だが、大きな口を開けっぱなして泳ぐ様子はちょっぴりユーモラス。体長8m~18mにもなるというジンベイザメが、4~6月頃になるとニンガルー・コーストを訪れる。
広いリーフの中を何頭ものジンベイザメが泳ぎまわる様子を見るだけでも圧巻だが、シュノーケルをしながら、一緒に泳ぐこともできるというスゴい体験もできる。
その生態に不明な点も多く、遭遇することが難しいとされるジンベイザメに確実に会えるだけでなく、間近で泳げるチャンスはココだけ。
ザトウクジラも現れる
ジンベイザメと入れ違いで現れるのがザトウクジラ。その大きさではジンベイザメとトップを争う大型の魚だ。
長く大きな手のようなヒレを翼のように動かして水中を泳ぐ姿は優雅であり、その巨体を水面に跳ね上げるジャンプ「ブリーチング」はダイナミックだ。
おっとりとした雰囲気を持つジンベイザメと比べて、群れで現れて激しい動きの多いザトウクジラは、一緒に泳ぐことこそできないものの、観察しがいがある。
ボートで観察ポイントへ向かい、ザトウクジラの巨体が水面をうつ時にあがるシブキと音にシビレたい。
ジュゴンにもマンタにも会える
人魚のモデルといわれるジュゴンの生息地でもある。数は多くないため、遭遇率はそれほど高くないが、シュノーケリングやダイビング中に出会えることがある。
一方でマンタは、日常的にあちらこちらで見かけることができるため、この辺りでは珍しい存在ではない。ダイビングをしていると、広々とした海を平たく大きなマンタが横切っていくのを見上げることができる。
コーラルと海底ケーブでダイビング
ニンガルー・コーストはどこの海に入っても色とりどりの珊瑚礁と熱帯魚たちに出会うことができる。しかし、沖にあるムイロン島やピークアイランドなどの小さな島々の周囲はそれに輪をかけたカラフルさ。
また、島周囲の海底には洞窟が網の目のように隠されていて、変化に富んだダイビングが楽しめる。
地形が複雑であるため、サンゴだけでなくそこに住み着く生き物の種類も多いのが特徴。キレイな海はオーストラリアのあちこちにあるが、目にする色や形の変化、生き物の種類の多さではここがダントツかもしれない。
フィッシングツアー
海岸沿いでも数百種の海の生物に出会えるニンガルー・コースト。沖へと出ればさらに違った多くの魚たちに出会え、釣って楽しみ味わうこともできる。
ダイナミックなフィッシング設備を整えたクルージングツアーも人気で、釣りだけでなく途中シュノーケリングを楽しんだり、サンセットを眺めたりもできる。
グループやカップルならばボートの貸切も可能だ。
マリンスポーツ三昧
シュノーケリングやダイビングばかりに目がいくが、ニンガルー・コーストでは、そのエリアごとに波や風が異なり、サーフィン向きな場所もあれば、ウィンドサーフィンやパラセーリング、そしてウェイクボードなどを楽しむのに適したエリアもある。
ビーチは広く、必ずしもビーチ沿いに専門店やレンタルショップがあるとは限らないため、狙ったアクティビティに関しては、街やホテルでしっかりと予約しておいたほうが無難だ。
また、場所によっては潮の流れが激しいため、ガイドなしでのマリンスポーツが危険な場合もある。個人で訪れる場合にも、現地のツアーデスクやショップでの情報集めは必須だ。
ケープ・レンジでハイキング&キャンピング
エクスマウスの南に位置する国立公園ケープ・レンジ(Cape Range National Park)は、石灰岩の崖がそびえ立ち、複雑な景観を持つ渓谷(クリーク)があちらこちらに点在している。特にヤーディークリーク(Yardie Creek)をボートでクルーズするツアーが人気で、ちょっとした探検気分を味わえる。
でも、この国立公園では是非四駆走行を楽しみたい。免許とある程度の運転能力が必要だが、自分の運転する車で野を越え山を越え砂にはまっていると、あっちからカンガルーが飛び出し、そっちではエミューが駆け抜けていくような体験ができる。
エクスマウスからは日帰りやキャンピングツアーがたくさん出ている。天然そのままのプライベートビーチやクリークで遊び、変化に富んだ岩山や見かけないワイルドフラワーの野原をハイキングするのも魅力的なアクティビティだ。夜は夏でも澄み切った冷えた空気の中、満点の星空を独り占めできる。
最後に
パースから2時間のフライトでエクスマウスへ、そこからはツアーかレンタカーでアクセスするのが一般的だ。
興味を絞り込めば、エクスマウスから日帰りでも楽しめるが、盛りだくさんな自然がいっぱいのニンガルー・コーストを堪能するには、1週間あっても足りないだろう。
キャンピングもできれば、ゲストハウスもある。ちょっと豪華な隠れ家的リゾートもあり、長期滞在してその広さを満喫したい。
そこを訪れた人しか感じることのできない感動を、写真、動画、そして言葉で表現してみませんか?あなたの旅の話を聞かせてください。