ポルトガルの小さな漁師町、ナザレに一週間滞在してみた感想と写真

ポルトガルだけを二週間旅すると言ったら、出会う人すべてに驚かれた。なぜスペインにいかないの?と。確かに、私がポルトガルで出会った旅行者たちはみな、スペインのついでに二泊ほどか、ヨーロッパ周遊の一部だった。

しかし私は数年前にテレビで見た小さな港町、ここ、ナザレにずっと来たかった。

 

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飛行機を乗り継ぎ、バスを乗り継ぎ、やっとたどり着いた夢のような土地。

メインストリートを歩きながら、ふしぎととても懐かしい思いに駆られた。私はきっとここに来るべくして来たのだと感じた。あたたかい日差しと心地よい潮風が私を迎えてくれる。数時間もあれば全体を見ることができる、ほんとうに小さな町だ。ホテルにチェックインして荷物を置いたあと散歩にでかけたが、町中を歩いても一日目は私以外のアジア人は見かけなかった。ほとんどの旅行客が一日で観光を終える町で、私は一週間の滞在を開始した。

まずは、出発する以前に何度も写真を見た、展望台からのペスカドーレス地区の景色を目当てにケーブルカーに乗り込む。ポルトガルは坂が多いため首都リスボンにも多くのケーブルカーがあるが、ここはもはや崖である。海辺のペスカドーレス地区から、崖の上のシティオ地区までは、ケーブルカーで5分ほど。降りて少し歩くと、すぐに目的の展望台に到着した。

 

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何度も写真で見た景色。それが今、目の前に広がっている。私はこの先一週間のうち、何度かここへ来ては座ってこの景色を眺めた。豆売りのおばあさんに顔を覚えられてしまったほどだ。

もっともケーブルカーは料金が高いので私は最初の一回しか乗らず、それ以降はケーブルカーの隣に見える細い道を登り降りして通った。

 

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ポルトガルの中でも、ナザレはあまり有名な町ではない。ヨーロッパの人たちは夏によくバカンスに来るようだが、アジア人観光客は非常に少ない。いても一日か二日の滞在で、たくさんの細い路地が魅力のペスカドーレス地区と、メジャーな展望台のあるプライア地区がメインだ。町の反対側にも展望台があるが、こちらは人影はまばらだった。

そのせいもあり、わたしはこちらのペネルデイラ地区にある、ミゼリコルディア展望台のほうが好きだった。

ここで出会ったのは、毎年バカンスで10日間ほどナザレに滞在するというドイツ人のおじさん二人組と、おばあちゃんに抱かれて展望台からの景色にはしゃぐ少年、自分たちで作ったビーズのブレスレットを売る少女たち、裏手にある教会のおばあさんだけだった。恐る恐る声をかけてきた少女たち以外は、みんな笑顔だった。ドイツ人のおじさんは、私の持っていたペンタックスのフィルムカメラについて長々と話をしたが、専門用語の多い英語はほとんど理解できなかった。

もちろんこちらの展望台にも何度か通った。私の泊まっていたホテルは素泊まりだったので、こちらに来るついでに、近くのカフェで朝食を取るようになった。おばあさんが一人でやっている小さな店で、地元の人がよく入ってきたり、おじさんたちが入口で立ち話をしたりしているカフェだった。顔を覚えてもらったころ、覚えたポルトガル語でAte amanha~(また明日)と言ってみると、おばあさんはちょっとびっくりした顔で、でも笑顔で返してくれた。次の日の朝に行くと、それまでよりもさらに笑顔で迎えてくれた。

 

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ペスカドーレス地区には、このような細い路地がたくさんある。どの道を通っても写真を撮りたくなってしまうし、白い壁に映えるカラフルな洗濯物を干している家もある。ところどころで、おじさんやおばさんたちが井戸端会議をしていて、とてもかわいらしい伝統衣装を身にまとっている。道はなだらかな坂になっているので、地区の奥のほうへ歩いて来た道を振り返ると、路地の先に青い海を見ることができる。すみずみまで散歩しても、一時間あれば十分まわれてしまう。

たくさんある小さなお土産物屋さんには、ポルトガル土産で定番の、カラフルなかわいい鶏の置物がこまごまと並んでいる。世界一の生産量を誇るコルクで作られたバッグや財布は、とても丁寧で美しい。

散歩に疲れたらメインストリートにあるベンチに腰をかけて海を眺めてもいい。私が訪れた5月は海水浴シーズンではないので、ビーチにはほとんど人がおらず、獲ってきた魚を干す漁師のおじさんが視界に入るくらいだった。

一週間もいれば、女一人旅のアジア人なんて顔を覚えられる。バス停近くにいる宿の客引きは私に声をかけなくなったし、スーパーマーケット(というより売店)の店員やカフェのおばあさんはほほえんでくれる。ナザレを出た後は、北のポルトに数日滞在して南のリスボンに帰る予定だったが、帰りにまたナザレで降りようかと本気で悩んだほど、ここを去るのがさみしかった。

 

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ポルトガルの旅を終え帰ってきて数年。未だナザレの町の風景を思い出す。

私にとって忘れられない、天国のような土地だ。きっとまたいつか訪れるだろう。それまであのカフェのおばあさんには元気でいてほしいと思う。

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