歴史の中で培われた伝統的美を重んじる街~ポルト(Porto)/ポルトガル
ポルトガル第二の都市であり、国名の由来ともなったポルトの旧市街は、多くの歴史的建造物が残る「ポルト歴史地区」として世界遺産にも登録されている。
街を歩いて気づくのは、古き良きものが守られ、伝統的な美のセンスで統一されている点。ポルトガルやスペインの他の都市と比べても、歴史的建造物が現代に生かされている。
クレリゴス教会と塔
18世紀建造の教会は背高のっぽなのが特徴。ポルトガルでも最も高い教会だといわれているらしい。隣に立つ塔は高さ76mと一際高く、225段の階段を登りきればポルトの街を一望できる。ポルトのランドマークとして、街の小路のあちこちから目印ともなっている。
教会に入って右が塔、左が礼拝堂への入り口となっている。見逃しがちな礼拝堂の内部見学は無料。十分な見ごたえのある美しさだ。
ポルト大聖堂(カテドラル)
12世紀に建造された要塞跡を改修して聖堂としたもので、外観はシンプルかつ重厚。12世紀のロマネスク、16世紀のゴシック、17世紀のバロックと、3つの様式を1つの聖堂内に見ることができる。
見どころは、万華鏡のようなバラ窓と銀で覆われたサン・ティシモ祭壇。どちらも輝いている。隣接する回廊は、アズレージョ装飾されていて美しい。
PR広告
ドン・ルイス一世橋
エッフェル塔を設計したエッフェルの弟子による作品で、やはり鉄のレースをイメージできる姿となっている。
両岸の丘の部分と河岸部分の高低差を、橋を2階建てにすることでうまくつないでいるが、現在は、2階部分に最新メトロが1階部分に車が通っている。歩いてならどちらも渡れるので、橋の両側に並ぶカラフルなマッチ箱のような家や遠くに見える旧市街の塔、ワイン蔵などを眺めながら渡りたい。
ただし、風の強い日はかなり揺れるので寒さに対してだけではない覚悟が必要かも。
アズレージョ
ポルトガルの装飾用タイルのことで、青を基調としている。
ポルトガル中のここかしこで、このアズレージョが壁や床、天井などに貼られている。ただの絵柄タイルではなく、芸術品的存在でもある。
15世紀以降、時代と文化と流行に合わせてアズレージョも変化しているのが、建造物に使われている様子から分かるのが面白い。
街で売られている涼しげな色合いのタイルは、鍋敷きや飾りとしても転用できるので、お土産にもおすすめだ。
アルマス聖堂
交差点の角に立つアルマス聖堂は、その外壁一面がアズレージョで覆われている青い教会だ。
確かにタイルだが、ほとんどキャンバスのような使い方。壁面に貼られたアズレージョには、芸術的な宗教画が描きこまれている。見ていて思い出すのは、銭湯のタイル壁に描かれた富士山。アレの宗教版に見えるのは気のせいだろうか。
カルモ教会
こってりした装飾の正面ファサードに対し、側面はやはりアズレージョ。ポルトガル最大規模の宗教画アズレージョといわれている。
カルモ教会の内部は、白と金を貴重にした豪奢な雰囲気。外側のアズレージョばかりが注目されるが、内部見学もお忘れなく。
サン・フランシスコ教会
アズレージョで覆われた教会たちに比べると地味に見えるが、サン・フランシスコ教会は内部がスゴイ。
主祭壇、海外での布教活動中に殺された修道士たちの像、そして、エッサイの樹と呼ばれるイエス・キリストの家系図を表現した祭壇などが、ターリャ・ドーリャと呼ばれる樫の木に金を塗りつけた彫刻で飾られている。
彫刻の技術的芸術的な素晴らしさだけでなく、その黄金色の輝きに目がくらみそうだ。
また、サン・フランシスコ教会で見逃がせないのが、エンリケ王子の両親の結婚式の様子を描いたフレスコ画。これは、ポルトでも珍しく貴重な14世紀の作品だとされている。
サンタ・クララ教会
アズレージョの華やかな教会に見慣れた目には、非常に地味に映る外観を持つサンタ・クララ教会だが、その見どころは内部の木製の装飾だ。
日本の寺なら、仏像の数々も内装も木が使われていて当然だが、石作りの教会の内部が木の彫刻像や飾りで埋め尽くされているのは珍しい。
観光客の少ないひなびた教会なので、ゆっくりと見学して独特のニオイと色を味わいたい。
カイス・ダ・リベイラ
ドウロ川の近くのレストラン密集エリアで、昼も夜も美味しいニオイが漂ってくる魅力的な場所だ。
広い路地にはたくさんの日傘が立ち、オープンエアー席でお茶や食事を楽しむ姿が目立つ。ポルトでもおしゃれなデートコースといった位置づけらしく、夜遅くまでにぎわっている。
サン・ベント駅
高い天井、アズレージョの壁、大理石の床。サン・ベント駅は、ポルトのターミナルステーションであるだけでなく、それ自体が芸術作品であり、歴史の教科書でもある。
それというのも、アズレージョの題材は主にポルトの歴史を扱っているからだ。青だけでなく黄色や緑を使った古い時代のアズレージョもあり、建築様式の美しさとアズレージョの芸術の両方を味わえる。
鉄道を利用しなくとも立ち寄りたい。
ボルサ宮
証券取引所として使われていたことから、「ボルサ(証券取引)」という名で呼ばれるようになったらしい。宮殿というよりは商工会議所的な存在だったのだろう。
内外装は美しいだけでなく、石膏の壁に木目模様を描きこんだ騙し絵的な部分や、アルハンブラ宮殿からヒントを得たアラブの間など、興味深い内容となっている。
見学はガイドツアー参加でのみ可能。
ソアーレス・ドス・レイス国立美術館
基本は近代と現代美術が中心だが、一部に中国や日本など、ポルトガルと通商関係にあったアジアの美術品も展示されている。
中でも「南蛮渡来屏風」は17世紀の作で、ポルトガル人や彼らの服装や所持品に対する日本人たちの興味と驚きの様子が伝わるもの。今更ながら、ポルトガルと日本との長く深い関係に気づかされる。
世界一の書店「レロ・イ・イルマオン」
「世界一美しい」とはポルトガル人たちがこの書店を紹介する時に自慢して使う表現。実際には「世界の素敵な本屋」の3位に選ばれたことがあるらしい。
しかし、一歩店内に足を踏み入れれば、「世界一美しい」が地元びいきな表現ではないことが分かる。
木製の棚に木製の回り階段と天井の細工、見事なステンドグラス。書店というよりは、古い大学の図書室といった感じ。本屋にここまで凝った建物もありなのか、と変に納得させられます。
ベンチの一つもあれば、一日中座っていられそう。
ドウロ川クルーズ
ドウロ川沿いにはポートワイン工場が並んでいる。特に上流部は「ドウロ川上流のワイン生産地域」として世界遺産にも登録されているほどだ。
ドウロ川クルーズとして有名なのは、この世界遺産地域を1日かけてクルーズするもの。1日のクルーズは優雅だがちょっと長すぎるという人には、もっと手軽なミニクルーズもある。こちらは、ポルト市街エリアにかかる橋を川から見上げていくツアーだ。
ポルトワイン工場
街歩きを終えたら次はもう一つのポルトの名物であるワインを味わいに出かけよう。ポートワインはポルトで熟成されたものだけに与えられる名称だ。
蔵の在り処は、路地を歩いていれば、もうニオイが漂ってくるのですぐに分かる。複数あるワイナリーは、見学の可不可、有無料などが異なるので要調査。ワイナリー見学ツアーも出ているが、時間の余裕があれば、散歩がてら覗いていってもいいだろう。
見学と試飲はセット。アルコール度の高いポルトワインの試飲を重ねると、帰りはかなりの千鳥足になる。
最後に
ポルトガルにポルトという名の都市があることは意外と知られていない。
港を意味する街の名ポルトの通り、ローマ帝国以来港町として栄え、ポルトガルの大航海時代には多くの船団を生み出し、世界中に送り出した。その繁栄ぶりは、残された建造物が語ってくれる。
そしてポルトの名がつくもう一つの産物ワインもまた忘れてはいけない。アルコール度数の高さに似合わぬ甘い口当たりとまったりとした喉ごし。試飲だけでなく、美しい街を見ながら美味しいシーフードと一緒にグラスを傾けたい。
そこを訪れた人しか感じることのできない感動を、写真、動画、そして言葉で表現してみませんか?あなたの旅の話を聞かせてください。