常晴れリゾートにある古都と恐怖の絶壁~マラガ(Malaga)とエル・カミニート・デル・レイ(El Caminito de Rey)/スペイン・マラガ
温暖な気候と美しい海と傾斜地の白い壁の住宅、スペイン南部の地中海に面した超有名リゾート。それが「コスタ・デル・ソル」。年間300日以上が温かい晴れの天気になるという恵まれた気象条件もあり、ヨーロッパ全土から、そして世界のセレブたちが訪れる旅行先となっている。
そんなリゾートエリアの中心都市の一つが「マラガ」だ。「マラガ」の古都としての魅力とそこから少し足を伸ばしたところにある、危険度世界一といわれる一般者の立ち入りが原則禁止とされている恐怖の絶壁トレッキングコースを紹介したい。
マラガの歴史
紀元前1000年以前から「マラカ」という港を持つ都市として発展し、地中海沿岸のほかの地域と同様にローマ人やイスラム教徒によって支配・征服されるという歴史を通り過ぎてきた。
一時的に独立国の首都として機能した時期もあるが、近代はスペインの都市として、現代は南ヨーロッパ有数のリゾート観光地としての名が知られるようになっている。
ピカソ美術館
マラガと聞いてピンとくるのは、リゾート愛好家か美術愛好家の可能性が高い。マラガは南欧屈指のリゾート地であると同時にピカソ生誕の地でもあるのだ。
街にはピカソゆかりの見どころが残されているほか、観光化を図るマラガの意向もあり、博物館も整備された。
ピカソ13歳から92歳までのほぼ生涯にわたる幅広いコレクションを誇る「ピカソ美術館」は、16世紀建造の旧伯爵邸をギャラリーに改造してオープンした。常設展示と特別展示があり、どちらも見逃したくない内容となっている。
また、ピカソとは直接関係ないものの、美術館地下は古代遺跡の保存エリアとなっていて、マラガ近郊で発掘された過去のマラガ住民たちによって削られた「壁」や遺物たちが展示されていて、なかなか興味深い。
ミュージアムショップには魅力的なカードやノートなどの小物がたくさん。またカフェではお腹にどっしりきそうなケーキセットがおすすめ。
PR広告
サンティアゴ教会
ピカソ美術館から歩いてすぐのグラナダ通り沿いにあるこの教会では、ピカソの両親が結婚式を挙げた。ピカソが洗礼を受けた洗礼台が残され、教会内にはピカソの出生証明書も展示されている。
スペイン各地にある大聖堂のような大きさや豪華さはないものの、街の教会としては十分すぎる立派さ。観光目的で訪れる人は少なく、静かに祈る住民の姿が多い。見学は無料。
ピカソ生家
サンティアゴ教会のすぐ近くにあるのが、ピカソが生まれてから10歳頃までを暮らした家。
メルセ広場に面した通りの角に立つマンションの中にあるピカソの生家は、アトリエが復元されているほか、小さめの作品や生前の写真や遺品などが展示されている。
メルセ広場にはベンチに腰掛けるピカソ像もあり、鳩が好きで娘に「鳩」という名前をつけたという彼の周りには今も鳩たちが舞い降りている。
カテドラル
「片腕の貴婦人」と呼ばれるカテドラルは、16世紀から250年かけてコツコツと建造されたが、建築中に資金不足となり、尖塔が片翼にしか作られなかった。
19世紀末に、残されたもう片方の設計図を見直す機会があったものの、キューバ戦争の勃発によってチャンスを逸し、片翼のままで完成とされた。
教会に入ったところにある入場券売り場の横には、作られなかった塔に設置されるはずだった時計が置かれ、横の階段から上った二階部分は展示室となっていて、カテドラルに伝わる絵画や聖遺物などを見ることができる。
聖堂内では上を見上げてその黄金色に輝く天井部分にビックリ。古い教会によくある重苦しさがなく、明るい明かりとゴージャスさが特徴だ。
ローマ劇場
20世紀半ばに発見されたばかりのローマ遺跡で、1世紀ごろに建てられ、3世紀頃まで使用されていたと考えられている。
マラガ市の西の丘にある古代ローマの要塞跡であるアルカサバの麓に何世紀にもわたって埋もれていたローマ劇場は、かなりの大きさを誇り、考古学的にも価値ある発見として注目されている。
掘り出されたローマ劇場は、大きな石がゴロゴロと転がる荒れた遺跡だったが、徐々に調査と修復が進んでいる。
アルカサバ
古代ローマ要塞跡に気づかれたイスラム教徒たちの城塞。11世紀頃に建造されたと考えられている。
石煉瓦を積み上げた二重の城壁で囲まれた堅牢な要塞は大部分が破壊されて残っていないものの、イスラム式の庭園と小規模な宮殿の一部は見学可能。高台なので、マラガの街を見下ろすのにもちょうどいい。
宮殿内は、アラブ風の幾何学模様やモザイク、アーチ型の出入口などがあり、「ミニアルハンブラ宮殿」と呼ぶ人もいるという。同じく規模は小さいが3つのイスラム式庭園も落ち着いた雰囲気で散歩に最適だ。
ヒブラルファロ城址
アルカサバの要塞跡をさらに奥へと急な坂道を進むと、14世紀以降に作られた城塞が見えてくる。建物は残っていないので、城壁沿いの歩き、中の庭園で上り坂の疲れを癒す。
急な石畳の坂を上がる体力がない場合には、バスを選ぶことも可能だ。景色は下りを歩きながら見てくるといいだろう。
マラゲータ闘牛場
6月から8月のシーズン中は熱気ムンムンの闘牛場。人気の闘牛士が登場する日や時間帯はチケット入手が困難な場合もある。
また、席によって迫力に大きな違いがあるため、闘牛目当ての場合には、オンラインや現地ツアーデスクなどを通してあらかじめチケットを入手しておくのがおすすめだ。
サッカー観戦
マラガでのもう一つの楽しみがサッカー観戦。「マラガCF」の本拠地であり、スペインの「リーガ・エスパニューラ」戦がロサレダ・サッカー・スタジアムで開催される。
対戦相手のチームによっては、有名選手たちのプレーを間近で見ることができる可能性もあり、チケットも比較的入手しやすい。
エル・カミニート・デル・レイ
世界有数の危険度ナンバーワン観光地として知られるが、数年前に死亡事故が続いたため原則として立ち入らないようにとの看板が立てられている。
ロッククライマーにとって絶好の名所である急峻な絶壁を持つ「エル・チョロ」の一部にあたり、2枚の断崖絶壁の両側に半崩落状態の小道がはりつくようにして峡谷奥のダムに向かっている。これが「エル・カミニート・デル・レイ」だ。
その名は「王の小道」を意味し、当時の王族が完成したダムの見学に訪れた際に使用したことに由来している。治水目的のためのダムは花崗岩の峡谷奥に作られ、普段はダム関係者以外に近づく者はいない。そのため、ダム工事のために作られた小道は、完成式典に利用されて以来、野ざらし状態だ。
崩れやすい花崗岩の崖に鉄の支柱を深く打ち込み、そこに鉄の梁を組み、コンクリートで幅1m弱の道と安全柵を全長3kmに渡って作ったものの、100年ちょっとが経過した今、その大半が失われつつある。
コンクリートが落ちてむき出しになった鉄の梁の下は200mを超える奈落のような峡谷。そこをまたぎ、ところどころに打ち付けられた鉄杭に命綱であるワイヤーを通しながら進んで行く。そのスリルに惹きつけられた怖いもの見たさ、命知らずたちが、立ち入り危険の看板を越えていくのだ。
マラガから車で1時間半、公共交通機関だと電車でアロラまで行きタクシーを利用することになる。近くにはロッククライマー御用達の宿が数件あり、ガイドや車の手配も可能。
最後に
セレブが集まるリゾートと断崖絶壁の壊れた小道。あきらかに不釣り合いな二つの観光地だが、どちらも人を惹きつける点では共通している。
安全なリゾートでのリラックス感も旅の大切な要素だが、危険と隣り合わせの感覚もまた、多くの旅行者にとって魅力的に映る。目を向けるのも足を向けるのも怖いが、でも興味津々といったところか。
しかし、安全面での保障はなく小道の進入路はふさがれている。実際に訪れる場合には自己責任についてよく考える必要があるだろう。
そこを訪れた人しか感じることのできない感動を、写真、動画、そして言葉で表現してみませんか? あなたの旅の話を聞かせてください。