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モザイク画に銅像にシャンデリア、地下に広がる大帝国~モスクワの地下鉄「Московское метро」/ロシア・モスクワ
世界各地に地下鉄はあるが、その年間輸送人員、つまり利用者数のトップをぶっちぎるのは東京。そしてその後を追いかけているのがロシアのモスクワなのだ。
利用者数では2位のロシアの地下鉄だが、その豪奢さではおそらく世界一のはず。社会主義リアリズムという社会主義国家が公式に認める芸術表現の粋をこらしたといわれるモスクワの地下鉄駅や構内は、観光客たちの格好の写真スポットとして人気を集めている。また、謎の多いロシアにおける秘密の地下道「メトロ-2」の存在もまた、モスクワの地下への好奇心をくすぐるには十分な材料といえるだろう。
地下鉄駅の豪華さ
地下鉄の入り口は何の変哲もない。今は、世界各地で見かけるようなMの看板にキリル語で駅名がかかれているだけの質素さだ。しかし、駅構内に入ると世界は一変する。
広々としたホールのようなホームには、大理石がはめ込まれ、柱には精密な彫刻がほどこされ、ドーム型の天井には見事なシャンデリアがぶら下がっている。地下なのになぜかステンドグラスがはめ込まれた窓まであったりする。シャンデリアがぶら下がる優雅で柔らかな灯りを受けるその下を地下鉄が滑り込んでくるのだ。
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エレクトロザヴォーツカヤ駅
電気工場のための駅だった名残から、駅舎の天井に300個を超えるオリジナル・ランプが設置されている。
中央のホールの柱に刻まれているのは、電気工場で働く作業員や、建設作業員たちの姿だ。
プローシャディ・レヴォリューツィ駅(革命広場駅)
銅像の多さで有名な駅。通路の壁の中に半身を埋めた形の国境警備隊と犬の銅像の前にはロシア人たちが集まっていることが多い。それもそのはず、この犬の鼻には試験合格の願いを、犬の足には恋愛成就の願いを叶える力があると信じられているという。
構内にはこのほか、合計76体もの銅像があり、銅像巡りのスタンプラリーを用意すれば楽しそうだと勝手な想像をしてしまう。
アルバーツカヤ駅
無駄に高い天井はドーム型で、浮彫装飾とシャンデリアで飾られている。丸みを帯びた壁や柱、クリーム色とかすかな緑の光線とのバランスが、高貴な雰囲気を醸し出している。大理石のベンチに座れば、そこが駅とは思えない。
ところが、その美しさよりも、かなりの大きさを持つ駅であり、そこで働く駅員用のカフェが有名。観光客でも利用可能なので、カタコトのロシア語を駆使して安いロシア料理を食べにいくのも悪くない。
キエフスカヤ駅
教会か修道院のような駅だ。白い大理石の壁に囲まれたホールの天井は白い漆喰で、ところどころにモザイク画が描かれている。その内容こそ、宗教ではなく、ウクライナとロシアの友好を題材とした歴史的なものだが、モスクワの地下鉄が度々テロの標的になっていることを考えると何やら複雑だ。
モザイク画は18枚あるが、その中に時代背景とマッチしないノートパソコンとスマホの似姿が! 是非見つけ出してほしい。
ベラルースカヤ駅
異国情緒というか、トルコなどイスラム系のニュアンスを感じ取ることができる内装を持つのがベラルースカヤ駅だ。
古代ローマ住宅のデザインを参考にしたといわれているが、ベースはベラルーシ文化。ベラルーシ人の生活をモチーフとする絵が12枚飾られているほか、壁の浮彫や床の柄もベラルーシ独特のものらしい。
マヤコフスカヤ駅
駅全体がアールデコ調に統一されている。天井には楕円形のスペースが作られていて、旧ソ連誕生にまつわる出来事をモチーフとするモザイク画が設置されている。テーマは「ソ連のある日」。朝から昼・夜、翌朝までの1日を追った作品となっているのだ。
ただ、戦闘機の飛び交う図などは、優雅な曲線に囲まれた環境にはちょっと物騒で不釣り合いだが、建設当時を思い返すと仕方ないのかもしれない。
ノヴォスロボーツカヤ駅
ステンドグラスのはめ込まれた通路が有名な駅。地下鉄に窓は本来不要。だからこのステンドグラスは人工的な灯りをあててその光線によって変わる色を楽しむ純粋なる美術品なのだ。
せわしなく行き来するロシア人たちの横に並ぶ青や赤を主体としたステンドグラスは、旅人にとっては一つ一つに立ち止まってそのモチーフを想像するに十分な興味をそそる存在だ。
コムソモーリスカヤ駅
ここは舞踏会のためのホールだといわれても納得。天井を飾る浮彫もゴージャスなシャンデリアも、両側のアーチ型の柱廊も全てが宮殿内のダンスホールのようなのだ。
こんな地下鉄なら、ガムのポイ捨てもなく、落書きもできない。ピカピカに磨きこまれた床、消えたり点滅するような電灯が一つもない整備良好さに、ただの「地下鉄」ではない扱いを感じ取れる。
ノヴォクズネツカヤ駅
この駅にも多くのモザイク画が設置されている。天井にはめ込まれたそのモザイク画は、飢餓に苦しむ町でやはり苦しんでいたモザイクの名匠によって作成されたものだ。
なんと、作者は最後の品を納品した数日後に衰弱のあまり息絶えたという。まさに命がけの彼の遺作は今も、ノヴォクズネツカヤ駅を美術館のように高潔なものに保つ役割を担い続けている。
メトロ-2
モスクワの地下鉄はかなり深いところに作られている部分もあり、そこまで下っていくためのエスカレーターの長さやスピードの速さには、初めて乗るとドキドキさせられる。
深い深い地下鉄にはそれだけの役割が担わされているともいわれ、いざという時(核戦争時)には、核シェルターとしても使われるとか。
第二次世界大戦後、市民を守る目的で作られた地下鉄兼地下シェルターだったが、市内各地には最高機密レベルのシェルターも作られ、より安全な移動手段を講じて辿りつけるようにしておく必要があった。そのための通路が第二の地下鉄とされるメトロ-2だ。政府の主要サイトと郊外のシェルターとを結ぶとされるこの路線は、正式には「ある」とも「ない」とも発表されていないが、モスクワでは「ある」と信じる人が大多数だ。
それというのも、作業が行われたらしい場所に残る立杭や換気口などが、既存の地下鉄とは無関係な場所にいくつも発見されているのだ。途中で放棄された様相を見せるそれらの地下道建設施設はロシア政府下でも固くガードされていて、近づくことはできないだけに、余計に好奇心をくすぐられてしまう。
モスクワ地下鉄歴史博物館
1935年に1号線の一部が開通した後、順調にモスクワの中心部と郊外とを結び付けていったモスクワの地下鉄。その建設にはロンドン・ニューヨーク、パリ、ベルリンなどの地下鉄先進都市の技術支援を受けたが、実際に設計や建設を行ったのは旧ソ連のエンジニアたちだ。
モスクワの地下鉄は、旧ソ連の技術の結晶であり、さらにそこはほかでは表現しにくい芸術のはけ口ともなり、まるで宮殿かミュージアムかと見間違うような優雅で豪華な世界が作りだされていたりもする。観光客向けの案内ツアーも複数催行されている。
1号線のスポルチーヴナヤ駅の地上3階部分にはモスクワ地下鉄歴史博物館がある。非常に分かりにくい場所であり、開館も週に1日だけという門戸の狭い施設だが、内部の展示は一見の価値がありそうだ。
1935年の地下鉄建設スタート当時の街の様子、設計や測量に使われた道具や記録、多くの写真、地下鉄内で使われていた電話機や乗車券の展示など、なかなか興味深い。鉄オタクなら興奮間違いなしだが、特別な興味を抱いていなくても、十分に楽しめる内容の濃さになっている。
古い車体はもちろん、年代ものの改札などもアンティークな感じがいい。
モスクワ地下鉄の安全性
モスクワの地下鉄は美しい。ゴミも落ちていなければ、浮浪者の姿もない。しかし、これまでに何度もテロの標的にされてきたことを考え、地下の深さと薄暗さと夜更け過ぎの運行状況を考えると、安全とは言い切れない。テロに遇う危険性は交通事故に遭う危険性などよりずっと低いとはいえ、見過ごせない大きな危険だし、スリや強盗といった身近な犯罪にもあいたくはない。
しかし、モスクワの地下鉄はモスクワ市民にとって毎日安く手軽に利用できる交通手段。危険と隣り合わせといった印象はまったくないのも事実だ。安全基準は個人が判断するしかないだろう。
また、写真撮影に関しても、以前は非常に厳しい規制が行われていたが、現在は警備員や警察官とセットで記念撮影をしても何のお咎めもない。地下鉄ツアーが行われているほどの観光地なので、大がかりな撮影会を始めない限りは問題なしだろう。
最後に
日本の地下鉄にも歴史のある路線があるが、古さばかりが目立って趣きはあまり感じ取ることができない。だからこそどんどんと新しく作り変えられていくのだろう。その点モスクワの地下鉄は古さの中に美しさや優雅さがある。これはそう簡単につぶしてしまうわけにはいかない。
また、日本の地下鉄構内の通路ではその両側に貼られた広告がある意味楽しみとなっている。しかし、モスクワの場合は、その手の広告や看板はほとんどなく、計算して設計された壁や天井がそれ自体の美しさのままで存在している。
同じ地下鉄でもずいぶんと違うものだと思う。単なる足として考えれば、日本式でなんの問題もないのだが、文化遺産として残って行くのは間違いなくモスクワの地下鉄だろう。それだけの価値が十分にあるのは、訪れてみれば明らかだ。
そこを訪れた人しか感じることのできない感動を、写真、動画、そして言葉で表現してみませんか?あなたの旅の話を聞かせてください。
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