麻という字の歴史的成り立ち。日本人の「大麻」と「麻」の認識について

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実は日本の意外なところで「大麻」という文字や言葉を見かけることがあります。

日本語の「大麻」、そしてよく似た「麻」の語源や意味、その違いなどを、日本の歴史や文化を通して少し覗いてみましょう。

「麻」という漢字の成り立ち

もっとも古い「あさ」は植物としての存在です。麻という漢字は、部首のまだれと林で成り立っていますが、もともと”林”ではなく、”痲”が使われていました。”痲”は、植物の茎を並べて繊維をはぎ取っている様子をあらわしています。

二つの「あさ」の漢字は、第二次世界大戦後の漢字整理によって「麻」に統一されてしまい、その後の混乱を招く原因となったといわれています。

繁殖力の強いアジア原産の「あさ」と、あさと同じように繊維を取って加工しやすい植物の仲間の総称としての「あさ」、さらには、布などの加工品の材料名としての「あさ」。これらの名前が「麻」の漢字で統一され、混同されるようになってしまったという説が存在しているのです。

「大麻」を辞書で調べると

ほとんどの場合、四つの意味が記載されています。

①伊勢神宮と諸社から授与されるお札
②幣の尊敬語
③麻の別称
④麻から作られる麻薬の一種

①と②は日本古来の信仰の中の神事で使われる道具を指しています。③は植物であり、布などの材料。④は薬物です。

一つの「大麻」という言葉でも、まったく違う意味を複数持っていることが分かりますね。

神事で使用されてきた「大麻」

神事の大麻には二つの流れがあります。

①のお札は、神社で購入したことがある人も多いはずの、あの、板や白い紙に筆で文字が書かれたものですね。②は同じく神社でお祓いを受ける時に頭上で振られる白いフサフサした幣(ぬさ)のこと。

幣の材料に麻が使われていたことから、「大きな幣」=大きな麻」=「大麻」と呼ばれるようになりました。ただ、漢字は同じでも読み方は「おおぬさ」のままだったのですが、いつしか「たいま」読みに変じてしまったようです。

そして、神社信仰が広がった平安時代以降、実際に伊勢神宮などまで参拝することができない人々が暮らす地方を御師(おんし・おし)が訪れ、大麻(大幣・おおぬさ)を使って祈祷を行い、その際に配られたお札の呼び名としても「大麻」が定着しました。

こちらの場合、正式には「大祓大麻(おおはらいおおぬさ)」、または「神宮大麻(じんぐうたいま)」でしたが、やはり簡略化されて「大麻」となりました。

今も、「大麻」の文字が書かれたお札は存在していますが、薬物の大麻と比較すると影が薄い感じ。ところが、ほんの200年程度前までは、「大麻」といえば、ふさふさした白い幣かありがたいお札のとだったのです。

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植物としての「大麻」

大麻の語源としてもっとも古い歴史を持つのが、この植物の「麻」。その歴史は、人類よりも古いだろうといわれています。

「麻」はアジアを原産地とする非常に繁殖力の強い植物で、日本にも広く分布しています。ほとんどほったらかしでも強く繁茂することから、日本人の生活の中でも大いに有効活用されてきました。

一般的に知られる麻の使いみちとして知られる布などの加工品は、麻の茎の皮部分の繊維を使ったもの。皮をはいだ内側は工芸品や燃料となります。また、麻の実は食用であり、そこから取れる油も調味料にもなります。

また、「あさ」という漢字の成り立ちで述べたように、「あさ」は、元祖「あさ」と、麻の仲間(苧麻・亜麻・マニラ麻など)の総称「あさ」と、繊維材料としての「あさ」など、本来は細かく分けて考えられるべき言葉です。でも、漢字をあてると「麻」の一つだけ。

こうして、「麻」の漢字だけでは、何をさしているのかわからない大混乱状態がうまれ、区別するために大きく育つ麻は「大麻」と呼ばれるようになったといわれています。また、最近では植物の麻限定の呼び名として「大麻草」も使われています。

薬物としての「大麻」

植物としての麻である大麻草の花や実は、世界各地で紀元前から栽培と薬としての使用があったとされ、紀元後100年ごろには隣国中国の書物にも記載がみられます。

日本の場合は、ずっと後の江戸時代に「阿呆薬」としてちらり紹介されています。食事に混ぜると「うつけ」になるという説明つきです。また、マラリアの治療楽としてわずかに登場するのも江戸時代です。

明治~戦前になると、麻酔、鎮静剤、睡眠薬、ぜんそく薬などとしての使用についても記されるようになりますが、その利用はやはりわずかで、ほとんどの大麻草は普通に植物として生活の中で加工して使われていました。

日本のどこでも繁茂していた大麻草ですが、それを吸引使用、タバコのかわりにしようという人さえ、この頃にはいなかったのです。

いわゆる麻薬としての大麻が登場するのは、戦後のこと。在日米軍を通じて、アメリカからもたらされたものだという説が主流です。その後日本も、アメリカなどで盛んに叫ばれた世界平和や反体制ツールとして大麻吸引が広がっていきます。

このように、日本で「大麻」がドラッグになったのは戦後のことであり、それも日本固有の大麻草とは別口からやってきたものだというのが、通説となっています。

麻薬としての大麻のその後

日本で麻薬としての大麻取締法の制定は1948年。アメリカの法律をそのまま日本の法律に盛り込んだことで、麻が麻薬よりも植物として大きな存在だった日本社会にはそぐわない部分も多く、大混乱となります。それでもいったんこの法律制定したことで、日本での大麻草の栽培は一気に減少して途絶えてしまいます。

大麻の吸引・所持・販売などは常に一定数が検挙され、多少の増減を繰り返していましたが、近年は世界で大麻合法化がすすみ、大麻の安全性が広まったこともあり、現時点では違法扱いである日本でも使用者が増えているのでしょう。再び検挙者数は増加方向を向いています。

大麻は昔から日本文化の中にあった…は嘘?

近年の大麻擁護発言の中には、大麻は日本古来より生活に密接したものとして存在しており、その取り締まりは日本の古い文化を否定するものだというものがあります。

確かに日本古来、「麻」は存在しており、「大麻」もありましたが、その「大麻」は現在問題となっている「大麻」とは、ルーツも文化も別物です。かなり新しい輸入物です。

今後の大麻と日本経済

世界的な環境破壊や自然懐古主義の台頭などもあり、自然素材である大麻草は見直される傾向があります。それでも、一度完全に廃れてしまった以上、過去のような麻繊維産業の繁栄は簡単には戻ってこないでしょう。

では、嗜好品としての大麻ならどうでしょうか?

純粋な大麻は、いわゆる麻薬とされているものの中で、唯一個人での栽培や生産が可能な薬物です。もっとも身近であり、手に入れやすく、手を出しやすい薬物でもあります。実際に、ベランダや室内で自家用大麻を栽培していたと検挙されるニュースをみることがありますね。

大麻擁護論が高まり、大麻合法化が現実となった時、かつてとは違った「麻」による日本産業が興る可能性はあるでしょうか?

現在は廃れているとはいえ、大麻草栽培の長い歴史を持つ日本だけに、もしも大麻自由化の世がやってくれば、一大栽培地となり、輸出国になる…なんて未来もありえるかもしれません。

まとめとして

日本に昔からあった「大麻」と今問題化している「大麻」はまったくの別物である以上、日本にとって、嗜好品の大麻はまだ新しい輸入品であり、十分な知識も研究も、そして議論も足りていないように思われます。

私たちは、流行に流されることなくその正体をよく見極めた上で、取り入れるのかどうか、取り入れるのならば、どれくらい、どうやってなど、理性的に判断する必要があるのではないでしょうか。

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