日本の按摩技術で海外視覚障害者の自立を支援

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日本の按摩技術で海外視覚障害者の自立を支援

「ボランティア」とか「支援」といった言葉には、ストリートチルドレンや難民などの、「生きること」や「生活」が成立しない極限状態に置かれた人たちを助けるイメージがついています。

でも、実際にはより多くのいろいろな立場の人たちが支援を必要としています。その一つの例が「視覚障害者」です。

日本に古くから伝わる視覚障害者の就労支援方法である「按摩」や「指圧」を、海外の視覚障害者の就労にも生かそうという試みがアフリカからアジアへと広がっています。

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これからのボランティアは一歩先に

世界中のボランティア団体が支援の手を差し伸べているのは、「水がない、食べ物がない、家がない」といった「生存」が危うい人々であり、「家族がいない、学校へ行けない、仕事がない」といった「生活」が成り立たない人々です。

先進国からのボランティアと後進国政府の政策が進み、これらの問題はゆっくりとではありますが、支援が必要な場所へ届くようになり、生活レベルの底上げという成果も徐々に上がってきています。

そこで、近年はそこから一段階進んで、「よりよい生活」への支援も行われるようになっているのです。

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アフリカおける視覚障害者の立ち位置

アフリカでは、健常者であっても定職を得るのが簡単ではない状況の中、視覚障害者が収入を得られる職業に就くのは非常に困難です。衣食住に困ることのない安定した生活レベルを確保できている社会層に所属していても、障害者となると厳しい偏見が待っているのが現実です。

視覚障害を、「行いの悪さから罰があたった」「うつるかも」と差別し、「目が見えないなら勉強しても無駄」「働けるわけがない」と偏見を持って見ることがまだまだ多いのです。

それでも、裕福な家庭の視覚障害者たちは一定の教育を受けることができ、そこで点字をマスターするなど社会活動に参加するための下地を持つこともできれば、家族の支援を受けて暮らしていくことも可能です。

ところが、貧困層の場合にはその状況は一転します。幼少期に家族から見捨てられて教会や保護施設などで育つ例も少なくありません。それでも、一定年齢まで「生活」を保証された彼らはまだ恵まれているといえるかもしれません。多くの視覚障害者は、学校に通うこともできず、当然点字など知らず、幼児から大人まで道端で物乞いをしてその日暮らしをするしかないという現実もそこにはあるのです。

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ケニアの国立マチャコス視覚障害者技術専門学校

アフリカ全体からみると比較的障害者教育が進んでいたケニアであってさえ、21世紀に入っても障害者のための技術専門学校は1校だけ。そこにケニア中から視覚障害者が集まってきます。

1校が受け入れられる人数はおのずと限られ、希望者すべてが教育を受けることはできません。それ以前に、学校に入学するだけの情報も知識もサポートも持たない人がたくさんいます。

さらには、せっかくの専門学校に入学できても、そこで学んだ技術や知識が、必ずしも実社会で収入につながるとは限らない状況でもありました。実際にそこで教員をしている人でさえ、「この学校内で学んだ技術では食べてはいけない」と公言していたそうです。

学校で新しいことを学び、自立しようと明るい未来を思い浮かべて入学する視覚障害者たちも、そんな実情に諦めを感じ取り、授業を欠席したり遅刻したり、授業態度も怠け癖がついたりしてしまい、実際に卒業後に学んだ技術を生かして自立できた例は多くありませんでした。

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日本の視覚障害者福祉は?

日本の障害者福祉も決して完璧とはいえません。西欧諸国の福祉先進国と比較すれば、まだまだの感はぬぐえません。それでも、視覚障害者の就労に限ってみてみると、アジアではトップクラスの水準なのです。

そこには、日本に古くから伝わる盲人による「按摩」「指圧」の技術が関係しています。

視覚障害があるからこそ、発達するといわれる指先の繊細な感覚を生かせること、また、映像や文字といった学習手段よりも、実地で学ぶ部分が多いという特徴もあって、按摩や指圧の職は視覚障害者の自立に大きく役立っています。

高齢化社会を迎えた昨今の日本では、按摩師や指圧師はさらに需要を増していて、社会が求める人数を確保できていないともいわれます。

一方で、盲人=按摩師・指圧師という図式が崩れ、視覚障害者がより多くの職種で活躍する人も生まれるという嬉しい側面もありますが、日本の按摩師や指圧師を養成する専門学校は一時のような人気はなくなっているようです。

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ケニアに「按摩」「指圧」は根付くか

日本では、古くから医療の一種として「按摩」や「指圧」が存在してきました。ちょっとした疲れから、頭痛などの痛み、スポーツ後のケアや事故後のリハビリなど、さまざまな分野で愛用されています。世の中でいう「マッサージ」とほぼイコール、またはその中の1つの形として誰もが認識しています。

ところが、ケニアでは「按摩」や「指圧」という言葉はほとんど知られていません。マッサージという言葉はあっても、性的なものをイメージするか、オイルを使って体をなぞる西欧スタイルを思い浮かべるのが関の山です。

そんな国に派遣されたボランティアたちが、まずしなければならなかったことは、「按摩とは何か?」「指圧とは何か?」を学生にも教師にも、客となる社会全体にも知ってもらうことでした。

広報活動

専門学校では、従来からあった皮革加工、木工、 編み物、コンピューターなどの就労技術や点字、杖歩行といった生活技術の指導に加えて、「按摩・指圧科」が置かれました。

生徒からも社会からも関心こそ集まったものの、実際に学び、習得できるのは年間数名程度。その卒業生たちの仕事の受け皿は在ケニア日本人社会でした。

これでは、今後の卒業生の就労・自立にはつながりません。そこで、日本から派遣された講師や卒業生たちは、ケニア各地を訪れて、「実演」と「講演」を行うことで、日本の「按摩」と「指圧」を広める活動を続けています。

学校や会社などで、「体験」をしてもらい、ケニア内のリゾート地のホテルでもデモンストレーションを行うなど、地道な活動の成果は、卒業生の中に「按摩師」や「指圧師」として自立できる人が現れつつあることで知ることができます。

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実技に加えて理論も必要

広報活動と同時に取り組まれたのが、学習内容の充実です。按摩師や指圧師として十分な実力を備えた卒業生を送り出すことが、彼らの自立につながり、さらには次の卒業生を生み出すことにもつながるからです。

でも、これまで「按摩」も「指圧」も存在しなかった国です。予備知識がないのはもちろん、教科書だってありません。学生たちは彼らの国で使用される点字を学んではいても、日本の点字教科書は読めません。

日本人講師は、最初は互いの体を使った実技で繰り返し体得できるよう教えはじめました。でも、現代社会で医療に限りなく近い按摩や指圧行為を行うには、理論的な知識も絶対的に必要です。

按摩と指圧を支える、理論としての解剖学や生理学、東洋医学などに加え、独特の日本語の専門用語、さらには独立して施術院を経営していくための経営学も必要でした。これらの点字教科書を作り、実技と理論を繰り返すことで、1年という短い期間で按摩師・指圧師として独立可能な人材を作りあげていったのです。

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アジアにも広がる日本の視覚障害者福祉支援

ケニアで一定の成功をおさめた視覚障害者福祉支援が、今アジア各地でも広がっています。

ミャンマー、モンゴル、タイなどで、視覚障害者のための専門学校における教師の人材育成や設備投資といった形で、視覚障害者たちの自立を高める支援活動が行われています。

これらの地域では、従来からあった視覚障害者福祉の不足している部分を支援する形で、按摩や指圧が組み入れられ、より早くより確実に彼らが就労・自立できる技術を習得できる環境作りに役立っています。

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まとめとして

日本からケニアへと派遣された按摩や指圧の講師たちは、ただ「指導する」だけではなく、日本国内とは異なる深く厳しい差別や偏見との戦いという試練も潜り抜ける必要がありました。

それでも、按摩と指圧という、日本でこれまで確実に成果をあげてきた技術と現代社会で必要とされるマッサージなどの代替医療の重要性の理論的裏付けを背景に、生徒も教師仲間も社会をも相手に根気強く指導を行ってきました。

その成果は、日本のマッサージ按摩や指圧がケニア社会で知られるようになってきたことで分かります。それは、盲人たちの指先がもたらすあの心地よさと奇跡のような効果を経験した人が確実に増えていることも意味しています。

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