水の箱庭~プリトヴィツェ湖群国立公園に行ってみた

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神々の手による水の箱庭~プリトヴィツェ湖群国立公園

太古からの自然を多くの残す国、クロアチア。小国ながら、8つの国立公園を内在し、4000種を超える植物と多様な動物たちの宝庫として、ヨーロッパ有数の人気観光地となっている。

プリトヴィツェ湖群国立公園は、そんな自然豊かなクロアチアの中でもひと際注目されている地域。

大小さまざまな姿で流れ落ちる滝でつながれた16個の湖が、緑の渓谷の間で階段上に美しい水をたたえている様子は、自然そのものの姿であるにもかかわらず、超自然的な力をも感じさせる景観だ

位置とその特殊な地形

東ヨーロッパ・バルカン半島に位置するクロアチアは、西にスロベニア、東にボスニア・ヘルツェゴビナ、北はハンガリー、南はアドリア海に接する小国である。プリトヴィツェ湖群国立公園は、東の国境近くに位置している。

プリトヴィツェ湖群国立公園は、ディナル・アルプス山脈と呼ばれる険しく大きな山脈のカルスト地形の一つであり、石灰石質の山地を水が隙間をくぐるようにして浸透しては亀裂を広げるという自然の浸食作用により、数百年数千年の時をかけて川、湖、滝を形成することで出来上がり、現在も変化し続けている大自然による芸術作品である。

16個の湖は、山から流れ落ちていく水が、階段状の平らな地点に溜まったもので、それぞれの湖の間は滝によってつながっている。上流の湖から下流の湖までは、標高差にして133メートル、長さは8キロメートルに及ぶ。

湖群は、苔・藻などが光合成を繰り返す中で蓄積された「トラバーチン(石灰質科学沈殿岩)」によって形成されている。さらに、地質に含まれるドロマイトや石灰岩の色合い風合いの影響も加わり、湖はさまざまな色に変化する。

多くの旅人をリピーターにさせるのは、そんな、絶え間なく変化する姿のあまりの美しさが原因だ。

観光地を襲った紛争地としての歴史

この地には、紀元前から数千年に渡ってさまざまな人種民族が住み着いたが、16世紀頃にはクロアチア人とセルビア人が住むようになっていたという。

観光地として知られるようになったのは、19世紀後半のことだ。湖群を保全するための委員会が組織され、ホテルも建設され、湖群一帯は一大観光地として、ヨーロッパ全土からの観光客で賑わった。

20世紀半ばには、ユーゴスラビア政府によって国立公園に認定され、1979年には世界遺産にも登録されている。

しかし、1991年のクロアチア紛争における、クロアチア・セルビア間の最初の武力衝突である「プリトヴィツェ湖群事件」の舞台となり、1995年にクロアチア軍が奪還するまで、一時的にクライナ・セルビア人共和国軍隊によって占領されていた。

この間に、湖群一帯は損害を被り、「危機遺産」リストに載せられることとなったが、その後、銃撃を受けた建物の修復、クロアチア政府による地雷撤去が進んだとして、5年後にリストから外された。

ただし、周辺地域では引き続き地雷撤去作業が続けられていて、時折、「地雷注意」の看板を見かける。クマ注意の看板とは、その精神的な重さが異なるのはもちろんだ。世界中の紛争が起きた地域で見かける悲しい現実である。

クロアチア政府にとって、「プリトヴィツェ湖群国立公園」は、もっとも人気があり、もっとも観光収入が期待できる観光地である。世界遺産を保護する活動は今後も続けられていくだろう。

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観光方法のメインはハイキング

美しい自然を堪能するには、ハイキングがもっとも適している。湖群沿いには、木板の張られた歩道が整備され、時間や体力に合わせてコースを選ぶことができる。これらのコースは、迷ったり、自然を荒らすことなく、安全に湖群巡りができるように設計されている。

しかし、混雑する日には渋滞が発生し、のろのろと進まざるをえないこともある。そんな時には、団体客の大半がもっとも楽なコースを取るのに反して、少しハードでも違うコースを取るという選択肢がある。息は切れるが、静かなハイキングを楽しめる可能性は高い。

水の美しさに惹かれ、水遊びをしたくなるが、遊泳は禁止。手で水温を確認する、足先を冷やすために浸す程度は許されるようだ。

近隣からの観光客たちには犬連れも多く、大型犬たちとすれ違うことも多い。彼らが美味しそうに湖水を飲んでいる姿を見ると、人間も試したくなるが、基本的にはこれも禁止されている。

このほか、サイクリングも可能。しかし、ところどころ段差があるため、かついで歩くことを覚悟しておく必要がある。同様に、ベビーカーや車いすでも散策可能だが、何カ所か持ち上げる必要のある難所があるので、公園入り口の案内所でよくコースを吟味しよう。

湖の横断や公園内の移動には、電気を使った船やバスが用いられていて、入園料に含まれているため、無料で使用できる。入園チケットは失くさずに手元に用意しておくように。

また、プロカメラマンや写真撮影が趣味だという人以外でも、シャッターを押さずにはいられない絶景続きのプリトヴィツェ湖群。独特の明暗や光彩を少しでも正確にフィルムに収められるよう、手持ちのデジカメの機能をよく研究しておくとよい。

さらに、あまりの絶景続きに、ついつい遠くの景色ばかりを眺めてしまいがちだが、足元にもシャッターチャンスはある。水回りには魚やカエル、草むらには野の花、木々には鳥が姿を見せる。

春夏秋冬、いつ行く?

夏がハイシーズンで、観光客で大混雑だ。特に、週末を中心に、クロアチア内の地元観光客たちが大勢やってくるので、できれば平日を狙いたい。

季節ごとに違った姿を見せてくれるプリトヴィツェ湖群国立公園では、季節を問わず楽しめる。夏には高原感覚で、秋には紅葉を楽しみ、冬には凍った滝や雪化粧した湖群ととりまく森、春には木々や草花が一斉に萌え出す様子を目にすることができる。

周辺

プリトヴィツェ湖群国立公園の周囲には、設備の整ったキャンプサイトがあり、緑に囲まれて快適に過ごせる。

また、周辺の村も、山あいにある田舎暮らしののどかな風景が広がり、時間と交通手段の不安がなければ、途中下車して散策したくなる。

しかし実際には、バス便が少なく、宿泊サイトも限られることがあるので、キャンプグッズを携帯していてどこでも寝られる、または車で移動しているのでなければ、バスの車窓から眺めておくにとどめた方が無難かもしれない。

宿泊と食事

オフィシャルホテルが数件あって便利。民宿、B&B、ゲストハウスもあり、予算や公園までの距離と相談して決められる。公園入り口の案内所でも、宿泊の斡旋がある。

食事は、公園内のレストラン、ホテルのレストランなどでとることができる。湖でとれるマス料理やラム肉を使った料理がおいしい。ただし、値段は高め。また、ハイシーズンには大変混雑するので、予約することが望ましい。

園内の売店で軽食や水は買えるが、高い上に食事時や団体客とタイミングがかちあうと、非常に混雑する。

サンドイッチや軽食などと十分な水分を、公園の外から持ち込むのが無難だ。ピクニックにピッタリの場所はいくらでもある。

ゴミのぽい捨てはもちろん厳しく禁じられている。持ち込んだゴミは持ち帰るつもりでいよう。

アクセス方法

ザグレブから日帰りが可能な距離だ。ザグレブの中央バスターミナルから長距離バスに乗れば2時間半ほどで到着。早朝出発でランチを挟んだ半日程度をハイキングに費やせる。

ただし、ザグレブ・プリトヴィツェ間のバス便に関しては、往路は始発なので、時刻・座席ともにあまり心配する必要がないが、復路はどちらもアテにならないので、要注意だ。

プリトヴィツェに止まってザグレブへ向かうバスのほとんどは、スプリットからやってくる。そのため、時刻表の時間があてにならないのはもちろん、空席がないことも多く、待てどもバスに乗れず、途方に暮れてしまう可能性もあり。

時間に十分な余裕を持つのはもちろん、何人かと相談してタクシーをシェアするなどの手も考えておくと安心。

スプリットからはバスで4時間半以上。長距離バスは、ザグレブ-プリトヴィツェ-スピリット間を往復しているので、ザグレブとスピリットのどちらを拠点にしても移動は可能。

ただし、スピリットからの日帰り観光は難しいだろう。

服装などの装備

本格的な登山ほどの準備は必要ないが、歩きやすい服装・靴がおすすめ。長ズボンがベストであり、季節に合わせ、街よりも数度気温が低いことを考えて、ウィンブレやジャケットを用意しておこう。

夏の日射しの強さと蒸し暑さはかなりのもの。帽子やサングラスにプラスして、タオルと着替えのシャツを持つとよい。

冬場は、しっかりと防寒して出掛けること。特に足元は濡れないよう防水のブーツなどを履くと安心だ。

注意したいこと

決められたハイキングコース以外にも、林道や脇道はある。しかし、熊や狼との遭遇や、さらに恐ろしい地雷との遭遇を考えると、あまりおすすめできない。

季節によって開園時間が異なる。当然冬場はかなり早い時刻に閉鎖されてしまうので、近隣の街からの日帰りの場合には早め早めの行動を。

雨や雪解けの影響などで水量が増えていると、歩道が冠水していることもある。タオルや替えの靴下を持参しておくとよい。

最後に

大自然の浸食によって百年千年かけて作り上げられた自然の妙景。我々の目にはまるで、神の大いなる手で作られた箱庭のように、美しく完成した姿に映ることがある。

しかし、「プリトヴィツェ湖群国立公園」は、今現在も自然の力によって変化し続けている。我々はただ、それを壊さないように見守り続けることしかできない。

自分の力が及ばない自然を前にした時、人は自分の能力を知るともいう。果たしてそれは、無限か有限か。

そこを訪れた人しか感じることのできない感動を、写真、動画、そして言葉で表現してみませんか? あなたの旅の話を聞かせてください。

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