空いっぱいの傘でポルトガルの夏を涼しく楽しく「アンブレラ・スカイ・プロジェクト」(Umbrella Sky Project)/ポルトガル・アゲダ
灼熱の太陽が照りつける夏のポルトガルの空を、カラフルに染めながら心地よい日陰を作ってくれる傘・傘・傘。
街中の通りやアーケードに、色鮮やかな傘が見上げる視界いっぱいに設置され、人々の足元に八角形の影を作りだします。青空を覆う黄、赤、青などの傘とそこを通り抜けてくる薄青い日差し。
アンブレラ・スカイ・プロジェクトが始まってからというもの、ポルトガルの夏の過ごし方が少し変わってきているようです。
アンブレラ・スカイ・プロジェクトの特徴
「日射病対策」。これこそが、このプロジェクトのきっかけであり目的であり、最大の特長でもあります。
ポルトガルの夏はかなりの高温になります。日本の夏のように湿度はあまりないため、不快指数は高くありませんが、知らぬ間に体の水分を奪い取られ、日射病や熱射病にかかりやすいという特徴があります。
ポルトガルに限りませんが、夏はホリデーシーズン。観光地としての収入に期待する地域では、このポルトガルの暑さは敵です。あまりの暑さに観光客が寄り付かず、訪れても日中は外出を避けるようになってしまうからです。
これは住民にとってダブルのマイナスです。自分たちも暑さでつらい上、観光収入も減ってしまうのです。アゲダの街でも、せっかく「芸術祭」を開催して人を呼ぼうと思っても、暑さが立ちはだかってしまいました。
そこで、考えられたのがこのプロジェクト。街の商店街などの空にワイヤーを通し、そこにカラフルな傘をたくさんぶら下げます。街が大きな花で丸ごと覆われたようなその景観は今ではアゲダだけでなくルトガルっ子たちの大のお気に入りになっています。
アンブレラ・スカイ・プロジェクトの開催会場・開催日
ポルトガル中部のアゲダは小さな街ですが、毎年夏になると芸術祭「アゲダグエダ」が行われるため、各地から観光客が訪れるようになりました。そして、アートなイベントを後押しし、住民と訪れる人の両方が少しでも快適に過ごせるようにと考え出されたのがこのプロジェクトです。
アゲダまでは、ポルトから電車で2時間半ほど。電車の数が少なく、アクセスが良くないので、旅の計画は綿密かつ余裕を持っておきましょう。
開催時期は毎年7月から9月です。アンプレラ・スカイ・プロジェクトは期間中ずっと見ることができますが、あくまでアゲダグエダの一部。街中がいろいろなアートやイベントで盛り上がります。
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アンブレラ・スカイ・プロジェクトの歴史
2012年初開催のまだ若いイベントです。街おこしとしてスタートしましたが、芸術祭「アゲダグエダ」としてよりも、アンブレラ・スカイ・プロジェクトの方の知名度が高いのが現実です。
アンブレラ・スカイ・プロジェクトで使用される傘のデザインや傘の配置などは、デザイン会社によって毎年考え出されているとのこと。その年ごとに色合いが違った空になっているようです。
アンブレラ・スカイ・プロジェクトのイベント
街のいたるところがアートのキャンバスとして使われます。アンブレラ・スカイ・プロジェクトの場合は「空」。
そのほか、ベンチや小さな路地の階段、街灯や柱、商店の看板など、あらゆるものがカラフルに塗られたり、絵を描き込まれたりしています。このアートイベントの根幹テーマには「カラフル」があるらしく、街中がレインボーカラーに染められていきます。
また、7~9月の開催中には、街の広場に仮設テントが建てられ、そこで連日のようにコンサートも開かれます。コンサート内容は昼夜、週日週末でガラリと変わり、子どもや学生による発表会レベルのものもあれば、本格的なロックやクラシックのコンサートも行われます。
そして、もちろんこのテントの天井も傘でカラフルに飾られています。
アンブレラ・スカイ・プロジェクトの記念品
街では、実用性とお土産用の両方を兼ねる傘が売られるようになりました。日傘として使用した後は持ち帰って、自宅の天井に飾っておきたいですね。
できれば、その年使われる色のすべてを持ち帰って、自宅にアンブレラ・スカイを再現したいところです。
用意するもの
日射しは傘のおかげである程度遮れますが、それでもポルトガルの夏の日差しはちりちりと肌を焼き、体の水分を奪っていきます。
日除けや日焼け防止の手段を用意すること、たっぷりと水分補給することが大切です。
参加できること
アンブレラ・スカイ・プロジェクトの下をぶらぶらと歩くこと、その日陰を楽しむこと、それが参加の楽しみでしょう。
見上げればパステルカラーの傘を通していろんな色の光線が交錯しているのが分かります。足元には、やっぱりいろんな色の傘を通してできる不思議な色と形の影が。
また、風が吹けばフワフワと揺れる傘とその影。どれもしっかりとアートであることを目で確認できます。
アーケードの下に置かれたカラフルなベンチに座って、アイスクリームを舐めながら、ぼんやりと空を見ている…すごく幸せな夏の午後の過ごし方ではないでしょうか?
一番の見どころ
アンブレラ・スカイ・プロジェクトは街のいたるところで行われています。ただ、そこで使われている傘は少しずつ違っています。また、傘に合わせて下に置かれたベンチのカラーリングが変わっていたりもします。
それらを、発見するのが一番の楽しみで見どころとなります。
商店街では、数百の傘とその影が買い物をする人や足を留めて、ベンチで休む人の休憩所を作り、目を楽しませています。
少し小さめの通りには、意匠を凝らした傘が設置されていることがあります。たとえば、オレンジの切り口のようなかわいい傘が浮かんでいたり、人形のついた変わった傘が高いところや低いところに浮かぶように設置されていたりします。
それほど大きな町ではないので、そぞろ歩きながら、そんな変わった傘の通りを見つけ出すのも楽しいでしょう。
まとめとして
夏の日差しが厳しいのは日本も同じ。ただ、台風などの影響で雨や風が多いことから、屋外の空に傘を設置したままにするのは危険だと考えることが多いようです。
そのため、似たようなプロジェクトはあっても、ごく短期間か、アーケードの下などの屋内設置になっています。それでもカラフルな傘が与えてくれる楽しさは味わえますが、夏の強い日差しを受けるからこそ、あのカラフルさが生きるのも確か。
ポルトガルは日本から遠く、観光客の多くが訪れるのは都市部まで。アゲダのようなアクセスの悪い田舎町は観光ルートに入りません。
でも、このアンブレラ・スカイ・プロジェクトを知ると、行きたい気持ちが湧きあがってきませんか? これといった観光地もなく、宿泊施設も少なく、英語もあまり通じない街ですが、少なくとも数日間はこの傘を見ながら歩き回るだけでも十分に幸せな気分を味わえそうです。