クライストチャーチのガーデニングパワーは震災後も健在「フェスティバル オブ フラワーズ」(Festival of Flowers)/ニュージーランド・クライストチャーチ
北半球が寒さで震える頃、さわやかな夏を迎える南半球のクライストチャーチでは、街中が華やかな色であふれ、鼻をくすぐる香りでいっぱいになる花の祭典が行われてきました。
緑豊かなニュージーランドは四季の花が咲き乱れる色鮮やかな国でもありますが、フェスティバル オブ フラワーズの開催中のクライストチャーチ中が、フラワーデコレーションされて、それはもう別世界のように美しく見事なのです。
フェスティバル オブ フラワーズの特徴
季節ごとにフェスティバルが開催されるクライストチャーチですが、花の祭典の華やかさは別格扱いです。
ただ街を花でいっぱいにするだけではなく、花ってこんなに応用がきくんだなと驚くばかりのデコレーションやイベントが盛りだくさん。花好きだけでなく、「花に、飾る以外にどんな楽しみ方が?」と首をかしげる人もきっと花の多彩な魅力を堪能できることでしょう。
町の観光施設には花のカーペットが敷かれ、公園にはベッドや椅子などの家具が花で作られ、公共施設には珍しい花や見事なフラワーアレンジの展示が置かれます。そして、それらの全てには目指す共通テーマがあり、メッセージを含んでいます。
その年のテーマに合わせたデザイン、エコ、芸術性など、花のあり方をとことん追及する町総出のイベントには、「キレイだな」とただ眺めて感動するイベントとしての楽しさだけでなく、花を通して社会問題にも取り組む意味合いも含まれているのです。
震災後の復旧が進む中、フェスティバルは予算不足のために規模が縮小されたり、開催されない年もあって残念ですが、フェスティバルそのものがなくなってしまったわけではないので、ファンたちは開催される年を楽しみにしています。
フェスティバル オブ フラワーズの開催会場・開催日
クライストチャーチ全体がフェスティバル会場となります。特に華やかなのは、町の中心部。町のシンボルでもあるクライストチャーチ大聖堂やビクトリア広場などがメイン会場となってきたほか、町の周囲の住宅地内の個人の庭もまた重要なフェスティバル会場となります。
ただ、クライストチャーチを襲った地震の影響で大聖堂は紙で作られたものになり、メイン会場は市内の動物園などに変更されています。かわりに紙の聖堂では、花をイメージしたコスチュームの展示などが行われています。
開催されるのは、ニュージーランドの真夏にあたる2月から3月。約1か月間にわたって、花のデコレーションが続き、花にまつわるさまざまなイベントが行われます。
PR広告
フェスティバル オブ フラワーズの歴史
1990年にスタートしたフェスティバル オブ フラワーズ。規模も知名度も成長し、オークランドで開催されていたフラワーショーの開催権利も手に入れるなど、順調に発展していました。ところが2011年の震災以降、メインイベントの会場だったクライストチャーチ大聖堂が大きな被害を受け、現在は紙の聖堂として規模を縮小していることや、町全体の復旧に資金が回され、フェスティバルの予算が削られたことなどが影響して、規模が縮小されたり開催できなかったりする年もあります。
ただ、大規模なフェスティバルは行われなくても、市内各地でフラワーデコレーションや、過去のフェスティバルにちなんだ展示などは行われているほか、フラワーショーは開催されています。
フェスティバル オブ フラワーズのイベント
「ガーデンコンテスト」は、フェスティバルの根幹ともいうべきイベントです。企業部門、一般部門の入賞作品の庭を見て回るバスツアーもあり、普段は開放されていない個人宅のバックヤードの見事なガーデニングを見学することもできます。また、企業部門のガーデンは必ずしもガーデニング関連企業ではないスイーツやアパレル企業などの参加も多く、クライストチャーチにおけるガーデニング熱の高さと浸透ぶりにビックリです。
これらの、参加・入賞ガーデンの見学ツアーは、ツーリストインフォメーションで申し込みができます。
「フリー キャンドル オペラ」というイベントもフェスティバル中に開催されることがあります。イベントの開催される夜、参加希望者は手にキャンドルを持って夜の公園の芝生に集まります。そして、そこで無料で公演されるオペラを観るという、シャレた真夏の夜を過ごすことができるのです。
「エラズリー フラワー ショー」は、大規模な園芸博覧会。南半球最大規模を誇り、世界中から出品者が集まります。以前はオークランドで開催されていましたが、近年はクライストチャーチでフェスティバル オブ フラワーズに続いて3月に行われるようになり、フェスティバル期間の最後を飾るイベントとして定着しました。
フェスティバル オブ フラワーズの食べ物
フェスティバル オブ フラワーズの開催中は、近郊でもさまざまなイベントが同時開催されています。カンタベリーで行われる「ワイン アンド フード フェスティバル」もその一つです。
ドリンク・食券付きの入場料を支払えば、ご当地のワイン各種やつまみのチーズやBBQなどを存分に楽しめます。花だけでなく団子も好きな人には是非足をのばしてほしいイベントです。
参加できること
コンテストに参加するには、クライストチャーチの庭付きに家に住む必要があります。そのため、普通の旅人が参加できるのは「見る」ことに限られます。
広場や公共施設での展示は原則として無料で見て回ることができます。
また、フェスティバル開催中に各地で行われるショーや講演会、教室などのイベントの多くは入場料が必要な場合が多いようですが、金額的には手頃な設定になっているほか、イベント会場内で使えるチケットや花などのお土産がセットになっていることが多く、ムダがありません。
一番の見どころ
ガーデニング好きなら絶対に見逃せないのが、一般部門のガーデニングコンテスト入賞者の庭。ガーデンシティとも呼ばれるクライストチャーチですが、フェスティバルの開催中はガーデニングの対象が庭や公園だけでなく、あらゆる建物、道、交通機関にまで広げられます。
花は生き物。当然ですが、咲いてほしい日に咲いてくれるとは限りません。それを、フェスティバルのコンテストにピッタリと合わせて咲かせるという計算もばっちり。デザイン性だけでは入賞することはできないのです。
たかが庭、されど庭。ガーデニングに時間も労力も計算をも惜しまない庭の持ち主のヤル気には感動ものです。
フェスティバル オブ フラワーズの会期中、もっとも人気を集めてきたのは、クライストチャーチ大聖堂のフラワーカーペットでした。大聖堂自体が地震の被害を受けて取り壊されてしまった今、同じフラワーカーペットを見ることはもうできません。とても残念です。
まとめとして
まさに華々しく発展を続けてきたクライストチャーチのフェスティバル オブ フラワーズでしたが、震災の影響を強く受けて、現在は縮小傾向にあります。
ただ、ガーデンシティとしてのクリストチャーチは健在で、個人の住宅でのガーデニングはもちろん、震災の影響を受けた建物や公園などでも、復旧作業と同時進行でガーデニングもまた再び行われています。
2016年のフェスティバルは中止が決まっていますが、市民たちの花とフェスティバルへの情熱がさめたわけではなく、夏の間、小規模な花にまつわるイベントがあちこちで行われ、また来年は開催にこぎつけようとの活動も始まっています。
地震で壊れてしまった大聖堂などを取り戻すことはできませんが、花はまた同じ姿で咲いてくれます。会場や景色は変わったとしても、クライストチャーチが花で囲まれるフェスティバルは、きっと復活することでしょう。まずは来年に期待です。