豊かな観光資源と悲しい流刑植民の歴史を持つタスマニア島を訪れて

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Tasmania

珍しい生き物と美味しい食べ物の形容詞として知られる「タスマニア」は、オーストラリアの南東に付かず離れずくっついている島。

オーストラリアやニュージーランドと同じく、豊かな自然の中に独特の動植物を育む、アウトドア志向にマッチした観光地でありながら、囚人植民と先住民との戦いなど、厳しい歴史を持つ地域でもある。

現在のタスマニアは、囚人たちの苦しみも、植民の厳しさも、先住民との戦いも全て文化遺産として抱いた、どこか懐かしく優しい雰囲気を漂わせている。

タスマニアはどこに?

オーストラリアの南海岸、東の海上240キロ地点に浮かぶハート型の島がタスマニア島だ。

北海道より一回り小さな島は、山岳地帯が半分を占める変化の多い地形を持ち、島の南北では気候が大きく異なる不思議な場所だ。

1~2万年前までは、オーストラリア大陸と、何百万年も前には、南極大陸とつながっていたタスマニアは、世界的にも珍しい動植物、景観、地質を持つに至っている。

タスマニアの魅力

Tasmania

豊かなだけでなく、特異性を持つ自然が、一番の魅力だろう。

山岳地帯とはいっても、急峻な山々が連なっているというよりは、高原や森林が多く、トレッキングにはもってこい。トレッキングのための道や宿泊施設も整っていて、初心者から上級者までレベルに合わせて、堪能できる。

また、島の持つ太古からの歴史、先住民の生活、植民地としての道のりも、それぞれが遺した地形、文化や建造物などで、島に違った魅力をプラスしている。

さらに、タスマニアの自然が生み出すさまざまな食べ物が、旅人の胃袋を惹きつけ、創造力に富んだ文化が好奇心をも惹きつけるのだ。

タスマニア独特の自然

Tasmania2

島の約50%は森林、40%は国立公園か保護地域、25%は世界遺産の原生地域という、緑の密度の濃さが自慢のタスマニア。

2億5千年という気が遠くなり想像もできない古代から続く太古の自然が引き継がれているといわれている。

原生地域は、熱帯雨林であり、巨木化したシダや針葉樹、ブナなどが混生している。そんな森には氷河で削られた渓谷や川が流れ、タスマニア独自の動物たちが生活している。

タスマニアはまるで、生きたジュラシックパークのようだ。

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流刑地タスマニア

17世紀にオランダ人探検家によって発見されるも、実際に植民がはじまったのは19世紀に入ってからのこと。その植民者は、流刑囚と看守たちだった。

大規模な植民が行われたのは、島の南東に位置するタスマン半島の「ポート・アーサー」と西の「マッカリー・ハーバー」。

囚人たちが最初に小さな町を作ったのがポート・アーサーで、囚人たちの生活の様子や看守や軍人たち特権階級の生活スタイルなどを、観察したり学んだりできる歴史的建造物が多く残されている。

植民地タスマニア

流刑となった囚人たちが最初の植民者だったタスマニア。囚人たちの多くは、収監されるのではなく、ゼロから町を作り出すために、住居・港・橋などを作り続けた。

その発展は目覚ましく、入植開始から20年余りで植民地政府として独立分離したほどだ。

彼らが作りだした物のほとんどを、今日も見ることができる。

先住民と移民

タスマニアには、先住民である「タスマニア・アボリジニ」が存在していた。

植民者と先住民の間では、激しい衝突が繰り返され、特に1820年代には、「ブラック・ウォー」と呼ばれる戦争状態にあった。

この戦いの後、植民地側はタスマニア島から先住民を一掃すべく、「ブラック・ライン」計画を立てた。島の男性入植者全員で列を作って、島の端から端へと囲みこんでいく、まさに「一網打尽」作戦だったが、不成功に終わった。

しかし、植民者側の強硬な策に動揺した先住民たちは、フリンダース島への移住を受け入れ、その地での生活環境の劣悪さやヨーロッパからもたらされた疫病の影響で、人口が激減。その後、タスマニア島内の保護区に再移住させられるも、生活スタイルや文化だけでなく、民族そのものが絶滅するという結果になった。

現在、タスマニア・アボリジニは絶滅して存在しない。白人との混血民族は少数残っている。

タスマニアの世界遺産

タスマニアの自然は、「タスマニア原生地域」として1982年に世界遺産に登録された。その後、1989年には、文化財としての価値も認められ、文化遺産にも登録された「複合遺産」地域である。

保護下に置かれたのは、国立公園5か所、州立保護区3か所、保護地域4か所、そのほかの遺跡など6か所という広範囲にわたる地域や場所だ。

貴重な自然遺産には、「タスマニアンデビル」、「かものはし」、「ウォンバット」などの、絶滅の恐れのある貴重な有袋類や哺乳類も含まれている。

そんな動物たちとは、各地にある野生動物園で観察したり、触れ合うことができるが、トレッキング最中に、ノソノソトコトコと現れることもある。

哺乳類で有袋類でもあった「タスマニアタイガー」が絶滅し、人間や病気以外の敵がいなくなったタスマニアの動物たちは、どこかのんびりとしているように見えるが、絶滅という危機に瀕している事実は深刻だ。

また、流刑植民地の「ポート・アーサー」は、世界遺産に登録された「オーストラリアの囚人遺跡群」の一部である。

ロングフォードの「ブリッツケンドン&ウルマーズエステーツ」、マリア島の「ダーリントン保護観察所」、サウスホバートの「カスケーズ女子工場」、タスマン半島の「炭坑史跡」の4か所も同様に、「オーストラリアの囚人遺跡群」として世界遺産に登録されて保護されている。

食べておいしいタスマニア

seafood

シーフード・ビーフ・ワイン・ハーブなど、タスマニアの自然で育まれた食べ物も見逃すことができない。

言わずと知れたシーフードは、全て近海で取れた新鮮な物ばかり。日本人の好きな牡蠣も新鮮そのものを生で食すことができる。

疫病発生のない国であるタスマニアで育てられた牛はプレミアム・ビーフとして知られる。柔らかさとジューシーさが人気のビーフを、ボリュームたっぷりガッツリと食べるのがタスマニアスタイルだ。

タスマニアには「ワイン・ルート」と呼ばれるワイナリー巡りが人気。ツアーで回れば、運転の心配をすることなくテイスティングも楽しめる。ワイナリーが小規模であり、輸入されていないワインが多いのが特徴。自分好みの幻のワインを見つけることができるかも。

歩いて楽しいタスマニア

walk

タスマニアの魅力を全身で感じるには、歩くのが最適。

体力に自信がなくても心配無用な10分程度のお散歩コースから、数日かけて山岳地帯を縦横走する本格的コースまで、より取り見取りだ。どのコースでも、十分に原始の森を体験できる。

おすすめは、世界遺産横断路の5~6日間かけるロングコース。出発はクレイドルマウンテンで、タスマニアで随一の景勝地として名高い。コース沿いには、設備の整った宿泊施設があり、食事の心配もない。ガイド付きのツアーも多く出ているので安心だ。

見て感動タスマニア

Hobart

タスマニアには自然に負けない文化もある。「ホバート」はタスマニアでは最古、オーストラリアでも2番目の古さを持つ都市。街のメインストリートに、築100年を超える建造物と近代ビルが仲良く並んでいる様子はパラレルワールドに迷い込んだような気分にさせてくれる。

中でも、「サマランカ・プレース通り」沿いには、捕鯨業者の倉庫群を利用した、レストランやバー、土産物店、ギャラリーなどが立ち並んでいる。また、毎週土曜日には、青空市も開催され、タスマニア各地から持ち込まれた製品が勢ぞろい。大道芸人や生演奏などもあちこちで見かけ、お祭り気分が盛り上がる。

「MONA(モナ)」は、新しくオープンした博物館コンプレックス。古代から現代にいたるまでの美術・産物が展示されている。タスマニアの歴史をコンパクトにまとめた便利な学習の場といえる。

タスマニアのサザン・ライツ

タスマニアの緯度は青森県くらい。それなのに、出現するのが「サザン・ライツ」。サザン・ライツとは、オーロラのこと。北極近くの寒い地域でしか見られないと思われがちなオーロラが、ここでは年中観測可能なのだ。

また、タスマニアは白夜になることもないため、意外にオーロラ観測率は高い。

タスマニアの気候

タスマニアは南半球。四季はあるが日本とは反対になり、日本人観光客がよく訪れる、8月は冬、12月は初夏となる。

タスマニアは比較的冷涼温暖な気候で、真夏である12~2月でも最高気温は25度以下。最低気温は10度近くまで下がる。

逆に冬にあたる6月~8月頃は、最高気温が10度前後と低温だが、最低気温が氷点下になることは少ない。

ただし、山間部か沿岸部か、南部か北部かで、かなり気候の違いがあるので、滞在先やスタイルに合わせて服装を整える必要がありそうだ。

タスマニアへのアクセス

タスマニアへの直行便はなく、オーストラリアを経由して訪れることになる。

オーストラリア東海岸の各都市からホバート空港までは、1時間~3時間。また、オーストラリアとタスマニアの間にあるバス海峡を渡るフェリーも運行している。

タスマニア島内の移動は、バスかレンタカーが中心となる。

フリンダース島で宝探し

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バス海峡に浮かぶ島々の中に、フリンダース島がある。人口が1000にも満たない小さな集落で、人間よりもワラビーやウォンバットの方が多い環境。森や林を歩けばさまざまな動物たちの気配を感じることができる。

また、海岸からは、アザラシ・イルカ・クジラなどの姿を見かけることもある、天然の自然動物園・水族館エリアなのだ。ダイビングすれば、難破船探検も可能。

さらに、この島はトパーズの産地でもあり、運が良ければビーチ歩きでかけらを拾うことができるかもしれない。

最後に

Wallaby2

タスマニアは国際便の発着が行われていないため、アクセスが悪く、海外からのツアー数は少ない。しかし、同じように自然に恵まれているオーストラリア人らが好んで訪れる観光地であることから、その素晴らしさはお墨付きだ。

また、あまり知られていないが、流刑地としての厳しい歴史を土台に、先住民との戦いという悲しい壁に囲まれてもいる島である。今も残される当時の建造物たちは、大切に保護され、新しい観光用途に生まれ変わっている。

タスマニアを訪れる観光客のほとんどが、タスマニアの持つ自然や表側の華やかさに目を向けるが、古さと新しさが混じり独特な街並みができあがった歴史を知って、平和なタスマニアをもっと堪能したい。

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