2万匹の化け猫が大行進!「猫祭り」(Kattenstoet)/ベルギー・イーペル
町のビルの壁にはよじ登る猫が張りつき、家の塀の上には猫が行列を作り、ショーウィンドーでは黒猫がニタリと笑いかけている、そんな猫だらけの町を2万匹もの化け猫がパレードしていきます。
猫祭りは、猫のぬいぐるみと猫に化けた人が大量発生する世にも珍しいお祭りです。
猫祭りの特徴
現地ではキャットパレードと呼ばれる猫だらけのお祭りですが、実物の猫はほとんどみかけません。目に入るのは、おもちゃやハリボテの猫たちと、猫になりきった老若男女の姿です。
イーペルの町にまつわる悲しい猫たちを悼み、猫との縁を深め、猫を愛し、祭りを楽しむ、そんな猫祭りは猫好きなら大興奮間違いなし! たとえ、普段猫にそれほど関心を持たない人であっても、あふれかえる猫と猫に向けられるイーペルの人々の情熱に感化され、祭りが終わることにはバッグの中が猫グッズでいっぱいになっていることでしょう。
猫に始まり猫好きになって終わる猫祭り。3年に一度しか開催されないため、チャンスを逃さないよう計画したいですね。
猫祭りの開催会場・開催日
ベルギーの西、イーペルという小さな町が会場となります。町は繊維工業で栄えた歴史を持ち、猫祭りもこの繊維が深く関係しています。
イベントは町の中心にある繊維会館とその広場で行われます。
猫祭りが開催されるのは3年に一度だけ、5月の第2日曜日と決まっています。
猫祭りの歴史
12世紀頃、高級毛織物業で発展したイーペルでは、ネズミの被害から商品を守るために猫がたくさん飼われていました。
ところが、14世紀にはいってペストが流行し、その原因に猫がやり玉にあげられます。猫が病原菌を運んでいるのではという疑いと、当時は真剣に信じられていた「病気=魔女による災い」という考えから、魔女の使いである猫を殺してしまおうとしたのです。
魔女だとの疑いを持たれることを避けるためには、飼い猫を塔から投げ落としてみせる必要があったという悲しい史実のはじまりです。
ペストや魔女の時代が終わっても、猫が災厄の運んでくるという考えと猫を塔から投げ落として殺すことで厄除けをしようという風習は残り、年に一度「猫の水曜日」と呼ばれるイベントで猫が犠牲になってきました。
猫の命の価値が見直されたのは1938年のこと。猫の水曜日は猫祭りへと姿を変え、これまでに犠牲になったたくさんの猫を悼み、猫に扮してパレードすることで災厄を遠ざけようという町をあげてのイベントとなりました。
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猫祭りのパレード
猫の着ぐるみを着たグループ、全身タイツに猫のフェイスペインティングのセクシーなグループ、手作り感のある巨大な化け猫の山車、魔女、魔女を追いかける村人などがイーペルの町を行列していきます。
パレードには毎回テーマが決められていますが、変わらずその根底にあるのは、魔女の使いとして虐げられた猫と悪者の魔女、そして魔女を追い払おうとする村人という設定です。
パレードのトリに登場するのは、巨大猫シープル「猫の王」とミネケ・プス「猫の女王」です。猫たちを守り、魔女を追い払い、村人たちと和解し、イーペルに平安をもたらしてくれる存在です。
猫たちの大行進は2時間にわたって続く祭りのメインイベントです。
猫祭りのイベント
塔の上から猫のぬいぐるみを投げる「猫投げ儀式」では、落ちてくる猫を受け止めた人に幸運が訪れると信じられているため、大勢の人が手を伸ばし大声をあげる大混乱となります。
それというのも、大きな声をする方へと猫が投げられるとされているため。もうみんな必死の形相です。小さな子どもはもみくちゃにされる可能性があるので、ご注意を。
さらに、祭りの最後を締めくくるのが魔女裁判とそれに続く魔女の火炙り。もちろん寸劇ですが、大きな焚火の炎とそこで焼かれる魔女人形を見ていると、ほんの数百年前には同じことが実際に行われていたのかと思うとゾっとします。
猫祭りの食べ物
パレードから投げられるキャンディやキャラメルなどをかき集めるちび猫たちがまたかわいいのです。ただ、投げているのも子どもたちなので、遠くまで飛んできません。縁起物でもあるので、これをゲットしたい人と考える人は多く、朝早くからパレードの通る道の最前列には場所取りをする猫たちの姿が見られます。
ベルギーだけに、町には甘いものとコーヒーの香りが漂います。猫祭り期間中には、猫を象ったお菓子が売られたり、猫グッズでデコレーションされたカフェが登場したりで、飲食中も猫に囲まれます。
猫祭りの記念品
猫グッズがいくらでも手に入ります。イーペルでは普段から猫グッズがたくさん売られていますが、祭りの期間は出店でもショップのウィンドーも猫だらけ。
猫好きならいくら予算を組んでも、スーツケースをカラっぽにしていったとしても、帰りには「もっと買いたかった。あれもこれも~」となること間違いなしでしょう。
用意するもの
猫に扮するにしても魔女に変身するにしても、日本から用意していくものは時にありません。現地で全て手に入ります。
参加できること
猫や魔女に扮すれば、祭りに参加している気分はおのずと盛り上がります。
もっとも簡単なのは、街角でやってもらえるフェイスペインティングでしょう。また、猫の着ぐるみも猫耳カチューシャや猫顔マスクなども売られているので、好みにあった猫に変身できます。
一番の見どころ
絶対に見逃せないのはキャットパレード。かわいい系、セクシー系、お化け系など、いろんな猫が登場してワクワクさせてくれます。
猫マネのダンスやパフォーマンスもあって退屈しないのはもちろん、写真を撮るのも忘れて見入ってしまいます。ビデオを設置しておくといいでしょう。
パレードの見学は、道端で場所取りをするという正攻法もありますが、メインストリートには観覧席が作られています。有料ですが座ってゆっくりとパレードを堪能できるようになっているので、2時間も続くパレードを見るには、断然こちらがおすすめです。
朝から場所取りをして、トイレにも買い物にもなかなか行けないという辛さから開放される点でも観覧席に軍配があがります。ただ、同じように考える人は多く、観覧席も予約しておかないとすぐに売り切れてしまいます。
塔から道化師によって投げ落とされる猫のぬいぐるみ争奪戦は、よほどのヤル気を持って臨むのでなければ、避難して少し離れたところから見ているのが賢明です。
人ごみというだけでなく、小さなぬいぐるみめがけて大人が殺到するため、ちょっとした恐怖も感じるほどの大混乱となります。でも、猫が蒙ってきた悲しい過去を反省して猫を悼むには、このセレモニーを見ることは欠かせません。
まとめとして
祭りが開催され、猫のパレードが通っていくイーペルの町は、ヨーロッパらしい古さと新しさの両方をあわせもつように見えますが、実はそのほとんどが過去半世紀の間に造られたものです。
イーペルは、世界大戦中にはドイツとフランスの、そして東と西との衝突地点となってしまい、幾度ともなく大規模な戦闘が繰り返されました。世界で初めて化学兵器が使用された町の一つとして、そして大砲や銃の砲火を浴び続けたことによって、まるで呪われているかのように、町が一つ壊滅状態になってしまったのです。
戦後、イーペルの中心地は昔の姿を取り戻すべく復旧再建されましたが、中心を離れた場所には新しい町が建設されました。
中世の悪魔祓いの行事がお祭りへと変化したのには、つらい世界大戦が一つのきっかけになっています。戦禍という恐ろしい過去の呪いから逃れようとするかのように祭りは町の人々の関心を強くひきつけたのです。
さすがに祭りとなってから使われるのはおもちゃの猫となり、伝説を起源としつつも、かわいい猫に扮した子どもや魔女役の女性たちが町おこしに一役かうイベントへと変化しています。
祭りの規模は、町の規模に見合った大きすぎも派手すぎもしないアットホームなものであり、開催されるのも3年に1度となっていますが、祭りによる観光客数増加の効果の高さから、今後は規模も頻度も大きく多くなっていきそうです。
次の開催は2018年。街中にあふれるであろうかわいい猫や小悪魔、熟女や紳士たちの本格的な扮装などが楽しみです。