はじめに
海外旅行で必ず必要になる、そして予算も大きく必要なもの。それは飛行機のチケットです。
船で大海原へと漕ぎ出す人も若干いるとはいえ、ほとんどの旅人にとって旅の最初の移動手段は飛行機。そして、あの大きな機体を外国まで飛ばすには当然とんでもない費用がかかります。本来、飛行機のチケットが高額なのは当たり前なことなのです。
ヒッピーやバックパッカーの全盛期には、格安航空券という名のお得なチケットが出回っていました。航空会社側が、埋まりそうにない席を「格安航空券」用に分別して旅行代理店に卸し、航空会社ではなく旅行代理店が販売するという形を取っていたものです。正規料金の半額から時には8割引程度まで安くなることもあり、多くの旅人をサポートしてくれました。
格安航空券の良さは、あらゆる路線が格安で利用できるところにありますが、残念ながらハイシーズンにはチケットを取りにくかったり、チケット内容の変更がほとんどできないなどの制約もセットです。バックパッカーたちはハイシーズンをさけ、日程やコースを変更できないという条件下で旅をしているわけです。
今も格安航空券は存在しています。長距離路線や多くのパックツアーなどでは現在もメインチケットとして利用されています。ところが、バックパッカーをはじめとする個人旅行者たちの目は今LCCへと向けられています。
急激にそのシェアを拡げているLCC。新しい選択肢として旅の可能性も拡げてくれています。ただ、万能のように見えるLCCですが、実際に利用してみると長所と短所があることが分かってきます。ここでは、LCCを利用する上で、旅人達が得られるプラス面と残念な面についてみていきましょう。
LCCの長所「安さ」
長所として声を大にしたいのがやはりチケット代金の安さです。盛んに行われている各社のセールをチェックしていれば、数十円というものや、往復で購入すると片道分が無料になるなどの破格チケットが販売されています。行きたい場所や時期がマッチすればこれほどありがたいことはありません。
LCCのチケット代金は常に変動していて定まっていないイメージですが、実は「定価」も存在しています。この定価が既に同じ路線を飛ぶ大手航空会社の格安チケットよりも安い設定になっているので、予算の限られる旅人にとっては常に頼れる存在なのです。
LCCの長所「航空会社直売」
LCCのチケットは旅行代理店でもネットの比較サイトからも購入することができますが、主に航空会社で直売されているのが大きな特徴です。代理店等を通して購入した格安航空券の場合は、万一の変更やトラブルの際に航空会社ではなく代理店を通して対応してもらうことになります。これが便利な場合もありますが、旅慣れた人にとっては、航空会社のデスクやコールセンターで直接交渉ができないことでイライラ感が募る原因ともなります。
LCCは価格を低く抑えるために、対人窓口やオフィスを置かず、チケットの販売や問い合わせはネットサイトかコールセンターに絞りこんでいます。旅人にとって、ネット回線か電話があればどこからでもチケットを予約できるという利点があり、同時にトラブルの際には航空会社と直接交渉して素早い対応を受けることが可能なのです。
LCC各社も、もとから制約のあるLCCチケットだけに販売後の問い合わせやトラブルの発生率がどうしても高くなることを承知していて、代理店等を通さず直営サイトで購入するように呼び掛けています。
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LCCの長所と短所「旅のスタイル次第」
LCCチケットと一般のチケットの違いとして一番にあげたいのが「預け入れ荷物の有料化」です。小さな機体を利用していることもあり、原則として荷物の少ない旅人に的を絞りこんでいるLCCでは、大きく重たい荷物にはチケット代金とは別に追加料金が必要となります。バックパックを機内持ち込みサイズに収められるかどうかによって、LCCのありがたみが違ってきます。
鶏と卵ではありませんが、旅のスタイルとチケットの安さのどちらを優先するかで、LCCの長所を享受できるか、LCCの短所に悩まされるかが分かれるわけです。
LCCの短所「路線が限られる」
どんな航空会社であっても世界中のすべてを網羅しているわけではありませんが、大手の場合にはグループ化が進んでいるため、協力路線を利用し合って乗り換えを行うことでかなりの地域へと飛んでいくことができます。
残念ながらLCCの場合には、LCC同士のグループ化は進んでいません。大手の傘下としてグループの一員となっているLCCは少なくありませんが、それでも、大手の路線の運賃を保護する力が強く、相互協力はあまり進んでいないのが現状です。
さらに、LCCは低価格をモットーとするため、小さな機体で飛べる短距離を主な守備範囲としています。そのため、太平洋を渡っていくようなロングフライトには利用できません。大陸の場合にも一気に飛び越えていくことはできず、あちこちでホップステップジャンプと乗り換えていく必要性がでてきます。
LCC各社の努力によって徐々に飛行距離も路線も延長されつつあるとはいえ、このようにLCCは、利用できる路線がかなり限られてしまうのです。
LCCの短所「座席数が少ない」
前述のように、LCCが利用する機体は小柄なものばかりなので、搭乗人数が限られてしまいます。座席数が少ないことは、どうしても希望するフライトを押さえにくいことにつながってしまいます。
特に人気路線やセール中にはあっと言う間に埋まってしまい、サイトや電話もつながりにくくなるというまるで人気アーティストのコンサートチケットの争奪戦のような状況になります。また、大手航空会社のチケットであれば、キャンセル待ちという手がありますが、LCCチケットの多くがキャンセルや変更が不可という縛りを持つため、原則としてキャンセルを待つこともできません。
座席数が少なくチケットを押さえにくいという状況は、今後LCC各社が路線を増やしていくことやチケットの変更可能範囲を広げていくことで、ある程度改善されることを期待しましょう。
LCCの短所「サービスが受けられない」
海外旅行の飛行機の中、何が楽しみって機内食や飲み物のサービス! というセリフは、ほんの10年ほど前までは実際によく耳にしました。最近は逆にびっくりするほど聞かなくなったセリフでもあります。
当時は、ビジネスやファーストクラスだけでなく、エコノミーでも航空会社ごとに価格だけでなく機内サービスで競争していた面もあり、あの航空会社は食事がおいしい、あっちならデザートのアイスがおいしい、こっちはアテンダントが美人だなどと噂になっていたものです。
ところが、LCCは原則として機内サービスは有料。水一杯にも値段がつけられています。飛行機の座席とセットだと思い込んでいたブランケットや枕、そして目の前にあるはずのテレビとヘッドフォンもないことがほとんどです。ただ、これをつまらないとか損をしたとかがっかりだと思うかどうかはあなた次第。
LCCはその安さの分いたってシンプルな機体のシートしか提供してくれませんが、簡単な飲み物やスナックは持ち込んだり、必要に応じて機内で購入したり、映画や音楽は自分の好みのものを携帯やタブレットを使って楽しめばいいと頭を切り替えれば、これまでのサービスのほうが過剰だったような気もしてくるから不思議です。
まとめとして
長所も短所も合わせ持つLCCですが、今後もその路線を増やしていくのは間違いなさそうです。また、大手にとっても脅威となりつつあるLCCは、LCC同士だけでなく大手とも競争と競合を進めていて、航空業界全体でより旅人に好都合な方向へと進化しています。
いいことずくめのLCCの将来ですが、ただ一点、安全面だけは若干の不安があります。表面的なサービスが向上する中で、機体整備・搭乗員の能力や質といった、利用者の目に見えない部分のサービスが削られることのないようお願いしたいものです。