クジラを死に追いやるプラゴミから学ぶ~地球温暖化に対抗する脱プラムーブメント

クジラを死に追いやるプラゴミから学ぶ~地球温暖化に対抗する脱プラムーブメント

クジラの死骸から発見された、40kg相当のプラスチックゴミ。これが何を意味するか、誰の目にも明らかでしょう。

ほとんどのクジラは大きな口を開けてオキアミなどの小さな生物を食べています。食べる時点で選り好みはせず、不要なものは排出していきます。

ひたすら口を大きく開けて泳ぐクジラの口に入りこむ生物たちにビニール袋がまじるようになったのは、ここ数十年のことです。それは、私たちの生活の中でビニール袋が大量に消費されるようになった時期であり、海洋汚染、地球温暖化が問題視されるようになった時期でもあります。

プラスチックゴミが海にあるワケ

理由は簡単。不法投棄、そしてポイ捨て。

海辺でプラスチックゴミを捨てたことなどないとほとんどの人が言うでしょう。海に流れ着くこれらのゴミの多くは、不法投棄によるものですが、海へと直接捨てられたものばかりではなく、それ以外の経路を経たものもあります。

海から離れた場所にある畑から風で舞い上がったビニール袋もあれば、街角のゴミ箱からこぼれたペットボトルが小さな水路に落ちて、大きな川へそして海へと旅してきたものも存在します。

そう、大規模な不法投棄だけ、海辺・川辺でのバーベキューや行楽のゴミだけではないのです。私たちが日常生活の中で使う便利なプラスチック製品が、様々な経路を経て海へと流れだしている可能性も少なからずあるのです。

今度は、「そんな奇跡のような経路で海まで流れ着くゴミがそんなに多いなんて!?」と思うかもしれません。例えば、買い物のたび必要となるビニール袋。私たち一人ひとりが手にする数は少ないかもしれませんが、世界全体でみれば、あってはならない奇跡の集合で海洋汚染が起きるほどに、世の中で生産され捨てられ続けているのです。

クジラがプラスチックゴミを食べてしまうワケ

最初に触れたように、クジラの食事スタイルはかなり雑です。狙った獲物をしとめて食すのではなく、大きなオキアミの軍団を周囲の海水やゴミなどと一緒に飲み込んでしまうという方法を取る種が多数です。

海に自然物しかなかった時代には、これで何の問題もありませんでした。ところが、海に人工物が混じるようになって問題が発生。その最たるものがビニール袋をはじめとした人が出したゴミなのです。

クジラは、飢えてゴミ袋をあさっているわけではありません。食べ物と間違えて飲み込んでいるわけでもありません。クジラは、これまで通りの食事をしているだけ。そこにゴミが混じってしまうほど、海にゴミが増えているという現状が、クジラがゴミを食べてしまう理由なのです。

プラスチックゴミを食べたクジラがどうなるか

2018年にタイの運河で衰弱した状態で見つかったクジラからは、死後に体内から8kgのプラスチックゴミが、同じ年にスペインの浜辺に打ち上げられたクジラの死骸からは、プラスチックを含む27kgのゴミが詰まっていました。2019年にフィリピンの海岸に打ち上げられたクジラの死骸からは、さらに上をいく、40kg分のプラスチックゴミが出てきました。

8kgのプラスチックゴミには80枚ものビニール袋が含まれていました。40㎏なら単純計算で5倍の400枚ものビニール袋がクジラの体内に侵入していた可能性があります。

プラスチックは消化できません。手術用の糸のように溶ける糸は特殊なものであり、一般的にゴミとなっているビニール袋の材料であるプラスチックは生分解してくれません。

クジラが飲み込んだビニール袋はクジラの消化器官へと流れ込んだあと、そこにはりつき溜まっていきます。巨大な消化器官を持つクジラです。数枚程度ならば、生きていることができるのでしょう。でも、数十枚を超え、消化器官の壁を覆いつくすようになった時、クジラはまず空腹を感じることがなくなり、また、いくらオキアミを食べたとしてもそれを消化することができなくなっています。そのクジラを待ち受けるのは餓死しかないのです。

ビニール袋を消化器官内に大量に抱えたクジラたちが見つかる時、それは死骸であるかすでに弱り切った姿です。その死因はもちろん餓死。ニュースになるこれらの私たちの目に触れるクジラたちはほんの一部。実際には広く深い海の中で、知られることなく犠牲となっているクジラたちがどれほどいるのでしょうか。

プラスチックゴミが与えるクジラ以外への影響

ビニール袋などのプラスチックゴミが影響を与えているのは、クジラだけではありません。ペンギン、アザラシ、ウミガメなど多くの海洋生物たちの命を、同じように脅かしています。

また、プラスチックゴミが海洋を漂っているうちに粉砕・劣化を繰り返す過程で紫外線を受けると、環境破壊の悪玉筆頭として語られる、あの温室効果ガスの25倍ものガスを発生することが、ハワイ大学の研究で分かっています。

プラスチックゴミは、海の生物の命のみならず、その命を育む海そのもの、そして地球温暖化というあらゆる生物生存の危機を招く大きな要因となっているのです。

プラスチックゴミ汚染に対するムーブメント

私たちが憧れる美しい海、そこには毎年800万トンを超えるプラスチックゴミが流れ出しているといわれています。日本人1人あたりのプラスチックゴミの廃棄量は年間32kg。世界で2位という非常に不名誉な地位を獲得しています。

「どうにかしなければならない」のはわかるけれど、「どうすればいいのかわからない」。それが、多くの人の現状意識ではないでしょうか。そんな中で、ムーブメントを起こしている人、企業がいます。

「太平洋航海プロジェクト」は、気候変動や海洋ゴミを調査し、海洋汚染がもたらす危険に警鐘を鳴らすことを目的として、環境活動家が起ち上げたプロジェクトです。気候変動と温暖化、プラスチックゴミの問題を一つのつながりとして捉えて直接調査を行い、自身で現状レポートを行っています。

また、個人レベルが賛同し参加しやすい活動のとっかかりとして、プラスチックフリーの生活用品店の経営も手掛けてもいます。「試しに脱プラ製品をつかってみたら、『こっちのほうがいいね!』と思ってもらえることをミッションにしている」というそのスタイルは、私たちにとってもわかりやすく参加しやすいムーブメントといえますね。

また、多くの企業がプラスチックゴミの削減ムーブメントを打ち出しています。その中でも目を引くのが、大手食品メーカーによる脱プラスチック戦略です。

まず、2008年に主力商品であるカップ麺の容器を発泡スチロールから紙由来のものへと変更し、2019年からは、生分解性の植物由来バイオマスプラスチックへと変更を進めることで、バイオマス率を80%以上にあげ、焼却時のCO2排出量を大きく削減できると発表しました。

もう一つ国レベルでの活動としてインドネシアの例をご紹介しましょう。

ゴミによる水路とビーチ汚染、さらには地球温暖化による海面上昇が大きな問題となっているインドネシアでは、使用済みのペットボトルを数本持ち込めば、市内のバスに無料で乗ることができるというシステムを導入しました。

このシステムは、ゴミ分別意識の向上とプラスチック廃棄物の削減を目的とするもので、500mlペットボトルなら5本、1.5Lなら3本、240mlの小さなプラカップと10個でバスチケット代わりになります。たくさんのプラゴミを持ち込んで、専用シールを貼ったチケットとしてキープすることもできます。

インドネシアではゴミ分別の意識がまだ薄く、道端で雑多なゴミを燃やし有害な煙が立ち込めることも少なくないようです。そんな中で始まり、続いているこのおもしろいムーブメント。少しずつ市民たちの意識変換に役立っているといいます。

まとめとして

ニュースで見聞きする海洋汚染、地球温暖化、ゴミ問題。どれも重要だとわかっていても、どうすればいいのか、何ができるのかわからない…。

大丈夫。身近なところにも、私たちにできることがちゃんとあります。ゴミを減らすためにマイバッグを持ち歩くこと、ゴミだと捨てる前にリサイクルの可能性を考慮すること、ゴミを正しく分別して正しい方法で捨てることなどは、日常生活の中ですでに行っている人も多いでしょう。

一歩進んで、脱プラ製品を選ぶこと、脱プラ活動をしている商店や企業を選ぶことでも、社会の脱プラムーブメントを後押しすることができます。

プラスチックと地球の間にある問題を知ること、そしてほんの少し気にかけ、気を付けること。たったそれだけでも十分に、みんなが暮らす地球にやさしいムーブメントとなっていくのです。

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