アメリカ南部の巨大な湿地帯~エバーグレーズ国立公園を訪れて

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足元にワニ、草陰にピューマ、頭上にフラミンゴ~エバーグレーズ国立公園「Everglades National Park」/アメリカ・フロリダ州

アメリカの観光の目玉となる大都市や自然の多くは、比較的乾いた場所にある。森林はあっても、海があっても、その隣には自然の砂漠かコンクリートの砂漠があるイメージだ。

しかし、アメリカ南部には巨大な湿地帯が横たわっている。アメリカ人たちがホリデーリゾート地やリタイヤ先として憧れるフロリダのかなりの面積を覆い、フロリダの潤し続けているエバーグレーズがそれだ。

エバーグレーズの名は、ここを訪れた測量士が「river grades(川の沼沢地)」と呼んだのを、「ever grades(広大な沼沢地)」と聞き間違えたことがきっかけだという。しかし、どちらも正解であることは訪れてみればすぐにわかる。

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エバーグレーズ今昔

フロリダ南部を覆い尽くす湿地帯。古くはフロリダ半島の大半を埋め尽くした湿地帯で、先住民のカルサ族が環境によく馴染んだ暮らしをしていた。

しかし、開拓民の流入によって、湿地帯は人口増加に伴う宅地化にために大規模な排水事業が行われ、浅い川が縦横四方に造られた。現在みられるエバーグレーズは、巨大かつ多数の排水路とその間をつなぐ浅い湿地の集合体だ。そしてカルサ族は、開拓民たちがもたらした疫病によって全滅したともいわれている。

湿地帯の環境の変化は生息する生物たちに当然大きな影響を与え、一説には20世紀半ばには、先住民カルサ族を含む貴重な種の80%が絶滅したという。また現在も、ハリケーンの影響や土壌汚染・水質汚染、海洋汚染などから生態に危機的な状況をもたらしているとして、危機遺産に登録された。

ちなみに、世界遺産に登録されている範囲は湿地帯全体の20%に過ぎない。国立公園として園内のほとんどが保護されているため、開発は一切行われていない。当然道路などの整備も不十分であり、環境には優しいが観光には決して優しくない。

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アーネスト・F・コー・ビジター・センター

エバーグレーズは広大すぎるだけでなく、公共の交通機関も整備されていなければ、道も十分には通じていない。公園には大きく分けて3つの進入口があるが、それぞれのエリア同士は陸続きではあっても道は通じていない。そのため、全体を一通りみたいと思うだけで少なくとも3日は必要になる。

公園の実質的なメイン・ゲートになるのが「アーネスト・F・コー・ビジター・センター」だ。ここからさらに、四方に点在するビジター・センターへとアクセスしていく。

アーネスト・F・コー・ビジター・センターには博物館並の資料展示があり、エバーグレーズの歴史や生態、現在抱えている問題などを子どもから大人まで分かりやすいように体験学習できるようになっている。

先を急ぐ気持ちはあるが、素通りせず、情報と知識集めに立ち寄りたい。

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フラミンゴ・ビジター・センターとフラミンゴ

フラミンゴと呼ばれるエリアは、野生のフラミンゴが多く生息していることからそう呼ばれている。しかし、その数は激減していて、その華麗な舞いを見かける機会も減っている。

フラミンゴ・ビジター・センターは公園の最南端にあたり、人気の海へ出るボートツアーの多くがここから出発していく。ビジター・センター周辺は比較的乾燥した地域だが、ここから湿地帯へ出るカヌーのレンタルや草原地帯と湿地帯の両方を楽しめるトレイルがあるなど、楽しみの幅は広い。

アリゲーターや水鳥だけでなく、マナティやイルカ、フラミンゴに会える可能性も高いエリアだ。

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シャーク・バレー・ビジター・センター

もっともエバーグレーズらしい「草の沼」の姿を堪能できるのがシャーク・バレーだ。ぱっと見には草原地帯に見えるが、その草の下は少なくとも膝までグズグズと埋もれてしまう湿地になっている。そして、その湿地にはいたるところにアリゲーターがウヨウヨ、蚊がブンブン。

シャーク・バレーにはシャーク・リバー・スルーという淡水湿地帯を作り出す川が流れ、その周りにはひと塊のミニジャングル「ハンモック」が点在している。ハンモックはエバーグレーズ特有ともいってもいい植生で、湿地帯に何千年もかけて積もった有機物の上に巨木が密生するエリアのこと。エバーグレーズのハンモックにはマホガニーの驚くような巨古木があり、大切に保護されている。

さらに、シャーク・バレー・ビジター・センターから7マイルのトレイルが整備されていて、その途中にはこの平たい湿地帯を見渡せる展望タワーがある。歩くのがつらければ、自転車で、または限られた場所にはなるがトラム・ツアーもあるので、楽をして大自然の風を味わうことも可能だ。

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アンヒンガ・トレイル

アンヒンガ・トレイルは30分から1時間ほどで踏破できる初心者向け。水辺あり、ハンモックあり、マングローブありで、景観の変化もあれば、生態の変化も大きいため、より多くの生物に出会える可能性が高い。

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出会ってしまうとビックリ間違いなしの貴重な静物たち

日本人にとって、アリゲーターは「怖いもの」だと思う。しかし、マイアミ在住者にとっては、野良犬や野良猫くらいよく目にする身近な存在なのだろう。公園内はもちろんだが、公園へと向かう道すがらや通りかかる村や町の溝でさえ、彼らの姿は珍しくない。

でも、広大な湿地帯に見とれてボンヤリ歩いていたら、うっかりアリゲーターの尾を踏みつけそうになったり、鳥の写真を撮ろうと水辺に近づいたら、大きな水音とともにアリゲーターが川に飛び込んだりといった体験はまた格別。

ここで出会うアリゲーターもワニも温和な性質で人を襲うことはないというが、全長5mを超えるという巨体とあの姿。5m以内には近づくなと注意書きがなくても、近づくにはかなりの勇気がいる。

また、鳥と呼ぶには大きすぎるフラミンゴや大鷺の仲間などは、人をあまり怖がらない。幅1mほどのトレイルを歩いていても、手すりにとまっている彼らが飛び去ることはまずない。

ただし、絶滅危惧種のピューマは肉食獣。出会えたならば、ラッキーなのかアンラッキーなのか。うっかりすれば襲われる可能性もゼロではないが、同時に極端にその生息数が減っているため、出会えればすごい確率で幸運でもあるらしい。

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アクセスと公園内の移動

マイアミ市内から公共のバスでアプローチ可能な入口もあるが、本数が少ないこと、入口で下されてもそこからさらにビジター・センターまで距離があることなどから、レンタカーでのアクセスがもっともおすすめ。体力に自信があれば、自転車もアリだろう。街からの送迎付きツアー利用も一案だ。

公園内は、ハイク、エアボート、バス、自転車、カヌー、バギーなどの移動手段が考えられる。カヌーは湿地帯を自由に移動できる便利な手段ではあるが、その操縦は初心者には難しいこともある。また、道しるべはところどころに刺さった白い細いポールだけ。これを見逃すと広大な湿地帯で迷子になる。

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絶対おすすめナイトクルーズ

エアボートを使った、湿地帯ツアーと海へと抜けるツアーは大人気。繁忙期はすぐにいっぱいになってしまうので、朝のうちに到着して、申し込んでおく必要がある。

また、ナイトツアーは限定時期のみの開催となる。こちらも人気が高く早い者勝ちなので、希望する場合には早めのチェックと予約が肝心だ。

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虫と日焼け対策

多少の差はあっても、年中蚊はいる。虫除けは必須アイテムだ。また、虫除けと紫外線予防を兼ねて、肌の露出は避けるのがベスト。足元は草でケガをすることもあるので、ビーサンなどではなく、靴を。そしてできれば長ズボンを履いておきたい。

また、湿地帯が多いことで想像できるように、トレイルハイクを楽しむつもりなら、靴や靴下の替えを用意しておくと安心だ。

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観光シーズンと宿泊

12月から4月は比較的乾燥した時期になり、蚊の被害が減るといわれている。天候も安定しているため、観光客数はかなり多い。逆に夏場は暑さも湿度もかなりひどくなるため、不快指数はうなぎのぼりだ。公園自体は常に開いているが、ツアー数が減っていることもある。

園内にキャンプサイトや簡易宿泊所はあるものの、その数は限られているので、繁忙期の宿は早めに抑えておきたい。園外に宿を取る場合は、近くの村や町ではそれらしい宿泊施設はなく、マイアミ市内などのホテルやホステルから通うことになる。

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最後に

大自然を人からシャットアウトして守るのではなく、人に開放して体験させることで守るのが、アメリカの自然保護のスタイルだ。

自然保護エリアにこんな立派なものを建ててもいいの? とか、湿地帯を覆うように作られたトレイルにも、湿地帯をスイスイと進むボートにもちょっとした疑問が浮かぶものの、広大さの規模が日本とは異なるため、これしきのことは大した直接的影響を与えないらしい。それよりも、そこに入って見て感じて、人の保護意欲を育てることに意義があるという考え方なのだ。

しかし、売店で売られる「アリゲーターバーガー」、「アリゲーターホットドッグ」、「アリゲータージャーキー」などには、実体験するにも程があるのでは…と思ってしまったが、みなさんはいかがだろうか?

そこを訪れた人しか感じることのできない感動を、写真、動画、そして言葉で表現してみませんか?あなたの旅の話を聞かせてください。

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