世界一のブロンズ涅槃仏が横たわる
福岡市近郊に位置する、古くは炭田地帯として、現在はベッドタウンとして発展する糠谷郡。7つの町からなり、現在進行形で合併と市制施行が模索されている成長株だ。
巨大な世界一サイズのブロンズ涅槃像「南蔵院」
全長41m、重さ300トンという大きな涅槃像は、写真より実物で見るとさらに大きく感じられる。内部に入ることもでき、ありがたい仏さまを内側から拝観できる。
平成7年建造と年若いが、ミャンマーから遥々日本まで送られてきた、釈迦・阿難・目連の三尊者の仏舎利を祀るためのもの。もちろん、涅槃仏の目印である足の裏の紋もあり、触れると身体健康や開運のご利益があるとされる。特に宝くじにそのパワーを発揮するとか。
涅槃像の大きさがあまりに印象的で、周囲を見渡すことを忘れてしまいそうだが、高さ11mの不動明王や地蔵尊、表情豊かな五百羅漢など、歴史を感じさせる信仰対象もたくさんある。見どころ満載の寺だが、真言宗だけあり、境内のほかのエリアはいたって厳かだ。
日本最古級の民家「横大路家」
別名「千年家」ともいわれ、国の重要文化財に指定されている。
最澄が滞在したときに灯された法火が千年たった今も消えることなく燃え続けていることから「千年家」と呼ばれるそうだ。
かやぶきの厚い屋根を持つ家は44代にわたって、法火とともに大切に受け継がれてきた。近年、補修や修復が行われ、より整備された姿を目にすることができる。
民家といっても一般住宅とは違い、かなりの有力者宅。当時の生活ぶりを想像してみたい。
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江戸時代に知られた眼下名医の旧家と街並み
糟屋郡の須恵町は、製薬業が盛んだった土地で、特に眼科に秀でた薬師や医師が出た。中でも、田原家や岡家は、眼科医として名を馳せ、地元だけでなく、京都や遠く北海道からも来院する患者がいたという。
日本各地から治療のために訪れる人のための宿泊施設が必要となり、宿場町としても発展をした、その面影を残すのが白壁の街並みだ。
眼科二家の一部は、周囲の街並みや白壁と、そしてそれぞれの家とセットになった薬師堂ともに保存されていて、当時の繁栄の様子を想像することができる。
まるで要塞廃墟「志免鉱業所竪坑櫓」
遠くから見ると、そびえるコンクリ風のタワーの廃墟そのもの。何やら陰湿なイメージ伝わってくる。
国営の炭鉱所の石炭搬出に使われていた施設で、高さは約50m。高い建物の少ない地域だけあり、その高さと古さは非常に目立つ。
炭鉱が活発に経営されていたころには、この手の建造物はここにも日本にも世界にもいくつもあったというが、現在はなんと、世界にたったの3カ所しか残されていないそう。非常に貴重なものなのだ。
古く、整備や修復も行われてはいないため、見るだけの施設。周囲はフェンスで囲まれて立ち入り禁止になっている。最盛期には6000人もの働き手を抱えたが、今は夢の跡。
不定期にライトアップが行われている。それに運よくあたると、暗闇の中、少々不気味に浮かび上がるコンクリの塔を見ることができるだろう。
糠谷郡が誇る2つの古墳「七夕池古墳」と「光正寺古墳公園」
直径29mの真ん丸古墳「七夕池古墳」は、ちょっとしたパワースポットとして知られている。
なんといっても、その形がいい。真ん丸で中心がやさしく盛り上がっている。不思議と心和む形だ。
さらに、埋葬されているのが、かなりの位を持つ巫女だという。これで、パワースポットにならないわけがないというわけだ。3000以上の玉が副葬品として出土し、それは歴史資料室に展示されている。
「光正寺古墳」は、非常に古くサイズもこのあたりでは最大規模。発掘調査で貴重な資料が多く出土し、地域の歴史を知る鍵となった。
古墳は前方後円墳。標高40mの場所に8mの高さを持つ。一見大した高さではないようだが、平地にあるため、頂上部まで登ると見晴らしがよい。
調査を終えたこの古墳は一般に公園として開放されている。古代古墳の上でゴロゴロと寝転がったり走り回ったり、ピクニックしたりができる貴重な場所といえるだろう。
町の魅力を隅々まで集めて展示「篠栗町歴史民俗資料室」
主に篠栗町内の歴史を学べる施設。町内から出土、収集された品々が展示されていて、神話クラス・旧石器時代から現代までのさまざまな用途・文化のグッズが並んでいる。
たかが街の資料室と侮ることはできない。資料の多さよりも、その多様性と好奇心をくすぐるチョイスがすばらしい。学習意識の高い大人だけでなく、子どもにもわかりやすい導入がされているので、家族で立ち寄りたいスポットだ。もちろん、無料。
隠れた名神社「伊野天照皇大神宮」
地元では近くを流れる五十鈴川での蛍が有名。時期になると、蛍見物の人が訪れるようになるが、普段は森閑として人の気配もほとんどない。
しかし天照大神所縁の地であり、自然の中に佇む重厚荘厳な神殿は格式として全国11社にだけ与えられる最高位を持つ。
しかし、その11社の中では最も知られておらず、気の乱れも少ない。非常に貴重な場所だ。
派手さはないが、落ち着いた雰囲気。広さもそれほどないし、社殿の数も多くはないが、整理され浄められている感じが清々しい。
インドア遊園地「ファンタジーキッズリゾート福岡」
福岡市郊外という感覚で糠谷郡志免町に作られた室内遊園地。その規模は日本最大級だ。
約1000坪という敷地内に、安全設計のアトラクションが設置されている。暑さや寒さ、安全面などから、外遊びをする子どもが減っているというが、ここは全天候型でスタッフの見守る中、親も一緒に力いっぱい遊べるとあって人気が高い。
旅の途中、大人の好みのコースに飽きてしまったり、体力を持て余してしまった子どもを連れていけば、あっという間に機嫌が直りそう。
猫だらけの島で癒され~「相島(猫島)」
「癒し」の代名詞の一つにもなっている「猫」。糠谷郡新宮町の相島は、野良猫たちがのっしのっしと闊歩する癒しの島として知られる。
町営の渡し船で約20分。相島はどこにでもあるような小さな島で、島民以外でここを訪れるのは釣り人くらいだったが、ある時から「猫島」として有名になった。
ただ、野良猫が多かったこと、その猫たちが人懐っこかったこと、島民によって猫たちがケアされていたことなどから、まずは海外メディアに注目され、それが日本でも報道されて人気を集めることになった。
実際に上陸してみると、確かに猫の数は半端ない。野良猫が多いが、中には飼い猫も混じっているという。のんびりと昼寝をしている猫もいれば、撫でて撫でてとすりよってくるねこもいる。猫好きの目じりは下がりっぱなしだ。
ただ、魚釣りで出かける場合は要注意。猫たちが釣れた魚の権利を主張してくるのだ。猫パンチ&スナッチにご注意を。
まとめとして
九州の大都市福岡のベッドタウンとしての役割を果たしつつも、旧石器時代・日本書紀・江戸時代と、脈々とその文化と歴史をつないできた糠谷地域。
一つ一つのスポットは若干離れているため、車で回るのがベストだが、どれも違った味わいを持ち、転々と見て回っても、間をあけて再び訪れても飽きることがない。
福岡旅行の際には、レンタカーで1日を割いて出かけてみたい。意外なほど満足感を得られるはずだ。