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え? 移民じゃなかったの? 勘違いで12日間の難民キャンプ生活
読んだ途端、「マジか?」「うぷぷ」と思わず驚きと笑いがこぼれるのを止められない、そんなニュースに出会いました。それは、観光客が移民と間違えられて2週間も移民キャンプで過ごしていたというもの。
どうしてそんなことが起こるんだ? どうして2週間も? とハテナが飛びまくり。実はそこには急激な経済成長で海外旅行熱がフィーバーし過ぎている中国という国と、移民の受け入れでいっぱいいっぱいなドイツという2つの国の事情が絡み合っていたのです。
彼に何が起きたのか?
このニュースの主役はドイツを旅行中の中国人バックパッカー「リーさん(31歳)」。彼は旅先のドイツ・シュトゥットガルトで財布を盗まれてしまい、被害届を出すべく警察を探して町を彷徨っているうち、誤って市役所のビルへと入っていってしまいました。
彼は、そのビルを警察署だと思い込んだまま、身振り手振りで財布を盗難にあったことを伝えようとしましたが、市役所職員は「ああ、難民申請ね?」と受け取ってしまったのです。手渡された用紙は「移民申請書」でしたが、中国人の青年は「盗難届」だと信じてサインをして提出したというわけなのです。
なぜそんなことが起きたのか?
この中国人青年、祖国を遠く離れたヨーロッパの地を一人でバックパックで旅しているにも関わらず、ドイツ語はもちろん英語も全く話すことができなかったのです。彼が語る言葉は中国語だけ。そして市議会ビルには中国語を理解する人はいませんでした。
青年は財布が盗まれたことを中国語で懸命に説明しようとしましたが、それが「助けてくれ」としては伝わったものの、「どうして」とか「何を」といった部分までは身振り手振りでは伝えきれなかったのでしょう。
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彼は移民として12日間を移民キャンプで過ごす
彼は移民(候補)として、移民キャンプへと案内されました。彼が財布を盗られたと訴え出た場所から400キロ近く離れたデュメルンの赤十字が運営する難民キャンプへと到着した彼は、ほかの各国からの難民とともに、衣食住と金銭の提供を受けていたそうです。
ハイデルブルク以上に中国語が通じにくい環境へと入り込んでしまった彼ですが、場面場面で「違うんだ」と訴え説明しようとしたそうです。職員たちも、彼の真剣さとその身なりの良さからほかの難民とは「違うかも?」という疑問は感じていたらしく、健康診断や指紋採取といった、移民に必要な手続きを行いつつも、携帯やオンラインのアプリでさまざまな翻訳や通訳を試みてはみたようです。
でも、皆さんもご存じの通り、よほど優秀なアプリでも正確な意志を伝え合うのは難しいもの。ましてや、中国語と一括りにまとめてしまいがちですが、複数の「地方中国語」が多数存在し、それぞれがかなり異なっているという事情もあります。アプリが訳してくれて理解できたのは「外国旅行へ行きたいのです」というフレーズだったといいます。
彼が移民キャンプから出られたきっかけ
どうにもラチが開かないままに12日間が過ぎましたが、このままではいけないと考えた職員のアイデアで、町の中華料理店へと使いが送られました。
驚いてキャンプを訪れた中国系の在住者が通訳をして、ようやく「大いなる勘違い」が判明したのです。
キャンプ場を去る青年の顔には、怒りではなく笑顔があったそうです。「ヨーロッパって想像してたの違う…」と言い残しつつも、旅行を続けるつもりだといって立ち去った彼、あらゆる意味で「大物」です。
浮かんでくるハテナの数々
たくさんの疑問がありますが、まず彼は一言の英語もドイツ語も話せない状態でどうやってドイツのシュトゥットガルトまで到達できたのか? いえ、それ以前に中国オンリーで海外旅行へ、それも個人的にバックパッカーで旅をしようとしたその勇気がスゴイ。
そして、財布を盗まれたこともアクシデント、警察署と市役所を間違えたこともアクシデント、移民申請用紙にサインしてしまったこともアクシデントだとしましょう。でも、移民キャンプに連れていかれた時点で何故もっと拒絶反応を起こさなかったのでしょうか? 指紋押捺や健康診断などにも、彼は協力的だったといいます。また、パスポートやビザを取り上げられても静かにそれを受け入れました。
大人しくおっとりとした性格だっただけかもしれませんが、あまりの大らかさにびっくりするやら、おかしさがこみあげてくるやら。普段、海外での中国人ネタはどちらかという顰蹙系が多いだけに、このびっくりほのぼのニュースにはすっかりヤラれてしまいました。
急激な経済成長を続ける中国と、そのスピードに追い付けない民度
中国・中国人は、10年単位でまるで別の国のような変貌を遂げています。経済成長と開放化政策とは、中国国内の自分の生活圏だけしか知らなかった中国人たちが、すべてをひとまたぎにして海外へと飛び出していける経済パワー「元」という橋をかけました。今や、世界各地の観光地で中国人を見かけない場所はありません。
ただ、彼らの民度に関してはさまざまな問題点が以前から指摘されています。でも、この民度が低いとの批判、中国人のせいというより、ただあまりのスピードに追いつけないだけだと理解すべきでしょう。知らない世界へ何の知識もなくいきなり飛び出してくれば、戸惑い自分の「やり方」を押し通そうとするのも仕方がないような気もします。「言語」もその一つです。そしてこれによく似た数々の事件が数十年前の日本人海外旅行者に当てはめられます。
ましてや中国の中国人は、中国がNo1だと教育を受けてきました。彼らの基準からすれば、中国語が話せない外国人のほうがおかしいという意識もまだ残っているのです。でも、元のパワーに乗っかって旅にでても、その先で待っているのが難民扱いでは悲しいようなおかしいような。
西欧諸国から見れば、アジアはひとくくり
ヨーロッパやアメリカなどから見れば、中国も日本もアジアは一括りです。それどころか、難民と間違えられたということは、南アジアや中近東、地中海沿岸なども含めた広い地域の住民がまとめて「難民候補」に見えてしまう恐れがあるのです。それでも、スーツを着てスーツケースを持っていればビジネスマンとして認識されるでしょうが、バックパッカーであれば小ぎれいではあっても難民と大差がありません。
「難民ではない」ことを証明する方法は、国籍を記したパスポートであっても十分ではないらしいことは、リーさんの例で分かりました。ではどうすればいいか。言葉で証明するしかないのです。自分の身分をパスポートと言葉とで証明し、それでも足りなければ、大使館に連絡を取ってほしいというコミュニケーション能力が必要なのです。
ドイツ人の5人の1人が移民という現状
ドイツではすでに数年前の段階で人口の5分の1が移民または移民の子どもでしめられているという統計が出ていました。この傾向はさらに進んでいると思われます。それというのも、移民家族の出生率は高く、若年層ほど移民率が高いためです。
これまでの移民たちは、ドイツ社会にどっかりと腰を下ろし、良質な若い労働力として生き生きと活動してきました。ところが、ここ数年急激に増えている難民は、その数の多さが桁違いであるために、労働力としても過剰な状態を作り出し、難民に分け与える仕事はないが、EUである限りは受け入れなければならないというジレンマにドイツをはじめとした多くのEU諸国を落としています。
そんな状況下だからこそ、いわゆる白人ではなく、言葉が不自由な人を「難民」であり「移民希望者」と思い込むだけの下地がそこにはしっかりと出来上がっていたのです。そして、受け入れる側の彼らが、現状に倦んでいることも確かです。今回の「勘違い」も、ある意味ドイツ側の不手際。リーさんが怒って騒げば、国際問題になってもおかしくなかったでしょう。
移民慣れし、移民の扱いがルーティン化して粗雑になりつつあるドイツの抱える問題の根っこの深さを、中国語しか話せないバックパッカー・リーさんが暴いて見せてくれました。
まとめとして
難民問題は、現在テロなどの大きな破壊行為が続いたことからその影になって、表立って議論される機会が減っています。だからといって、決してなくなっているわけではなく、今もヨーロッパの各地で難民が指紋採取やパスポートと交換に衣食住の提供を受けているという事実は変わりません。
今回の勘違い事件は、懐の深いリーさんのおかげで丸く収まりました。それどころか、ニュースを見聞きした人にちょっとした笑いまで提供してくれました。でも、日本人である我々にとっても、旅行で訪れる場所であるヨーロッパ各地が、アジアの隣人たちや地中海沿岸地域の人々にとっては、人生をかけた駆け込み寺でもあることを、改めて思い出させてくれる一件でした。
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